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『「文明」と「野蛮」のアーカイヴ』 制御できぬ「野蛮」に芸術はいかに関与するか

『「文明」と「野蛮」のアーカイヴ』から、ゴダールの映画作品『イメージの本』

 本書は、「堂島リバービエンナーレ2019:シネマの芸術学_東方に導かれて_ジャン=リュック・ゴダール『イメージの本』に誘われて」展の、展覧会図録だ。J=L・ゴダール、トーマス・ルフ、ゲルハルト・リヒターら「巨匠」による断片的なイメージを集めた作品群と、ダレン・アーモンド、フィオナ・タン、空音央+アルバート・トーレンによる映像、佐藤允のペインティングにはそれぞれ引用やアーカイブの手法が用いられる。本書はさらに、それらの膨大な記録写真が中心におかれたいわば「アーカイブのアーカイブ」という入れ子構造になっており、それを五名の書き手によるテキストが挟み込んでいる。

 西洋哲学は文化と自然を対置させ、前者が後者を制御するものと考えてきたが、「文明」が進んでも「野蛮」(戦争、テロ、差別など)は消滅しない。簡単には答えの出ないこの難問に、芸術はどう関与できるのか。テキストはどれも硬派だが、読み応えがある。=朝日新聞2020年7月18日掲載