第164回芥川龍之介賞・直木三十五賞(日本文学振興会主催)の選考会が1月20日、東京・築地の「新喜楽」で開かれ、芥川賞は宇佐見りんさん「推し、燃ゆ」(文芸秋季号)、直木賞は西條奈加さん『心淋し川』(集英社)に決まりました。
【芥川賞】宇佐見りん「推し、燃ゆ」
宇佐見りんさんは1999年、静岡県沼津市生まれ、神奈川県在住。現在大学2年生。2019年、母娘の愛憎を方言に似た言葉遣いで描く「かか」で文芸賞を受賞しデビュー。同作で20年、三島由紀夫賞を最年少で受賞した。芥川賞の21歳での受賞は、04年に同時受賞した綿矢りささん(当時19歳)と金原ひとみさん(同20歳)につぐ、史上3番目の若さとなった。
受賞作は、応援するアイドルがファンを殴って炎上した女子高校生が主人公。自らの「背骨」に例えるほど全身全霊で他者を推す=応援する生活のゆらぎを、するどい肉体感覚で描く。
>デビューは文芸賞、“同期”の遠野遥さんは前回の芥川賞受賞者
【直木賞】西條奈加『心淋し川』
西條奈加さんは1964年、北海道池田町生まれ。東京英語専門学校を卒業後、会社員として勤務するかたわら、2005年、「金春屋ゴメス」で日本ファンタジーノベル大賞を受賞し、デビューした。15年、「まるまるの毬」で吉川英治文学新人賞を受賞している。直木賞は初めての候補で栄冠を射止めた。
受賞作は、江戸の片隅で身を寄せ合う長屋の住人たちが主人公の短編集。貧しい家庭からの脱出を夢見る少女、好いた女性が忘れられない板前らに陰からそっと手をさしのべる差配の老人には、誰にも話せない秘密があった。ささやかな日々の暮らしに起きる変化を丁寧な筆致で描いた。
>西條奈加さんが和菓子職人の世界を描いた「まるまるの毬」インタビューはこちら
他の芥川賞候補作はこちら
・尾崎世界観「母影(おもかげ)」(新潮12月号)
・木崎みつ子「コンジュジ」(すばる11月号
・砂川文次「小隊」(文学界9月号)
・乗代雄介「旅する練習」(群像12月号)
他の直木賞候補作はこちら
・芦沢央「汚れた手をそこで拭かない」(文芸春秋)
・伊与原新「八月の銀の雪」(新潮社)
・加藤シゲアキ「オルタネート」(新潮社)
・坂上泉「インビジブル」(文芸春秋)
・長浦京「アンダードッグス」(KADOKAWA)