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『電線絵画 小林清親から山口晃まで』 近代化していく風景に描かれ続けてきた「電柱」

『電線絵画 小林清親から山口晃まで』の表紙。本書の展覧会は練馬区立美術館で18日まで開催中

 電線絵画とはその名の通り、電線や電柱を描きこんだ絵のことだ。浮世絵から油彩画、日本画、版画など、実に多くの芸術家が電線を描いていた。幕末から現代まで、近代化していく風景と共に、電柱は描かれ続けてきた。こんなに描かれていたことに、気づかなかった、本書をめくるまでは。

 一度めくったらもう、気になって目が離せない。富士山を堂々と遮る電柱(小林清親)。ぶっとく空を埋め尽くす電線(朝井閑右衛門)。「電線、電柱をどう描いているか」から、好きな画家を発見することもできるだろう。新作は1点もない。でもフレッシュだ。なんといっても「電線絵画」、このネーミングが素晴らしい。名付け親は、本書の企画・編集の加藤陽介学芸員。

 目立たないが強い印象を残す、名バイプレイヤーのような電柱と電線。災害や戦争など歴史とも深く結びつき、現代まで繫(つな)がっていく。全部が名作ではない。でも、電線、電柱を描いた多くの画家たちの目線の連係プレーが、新たな美術史を照らす。=朝日新聞2021年4月3日掲載