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「珈琲いかがでしょう」で知る、移動珈琲屋のお仕事 一杯に「生きるヒント」を込めて

文:片岡まえ

 軽快な音楽とともにやってくるパン屋、「や~きいも」という声のする屋台・・・・・・耳に届くとついつられて、その姿を探してしまいますよね。最近ではテイクアウト用のお弁当を販売するキッチンカーも増えてきました。今回は、中村倫也さん主演でドラマが放送中の漫画『珈琲いかがでしょう』(著・コナリミサト、マッグガーデン)を紹介します。珈琲を車で販売する移動珈琲屋を舞台に、そこに集う悩める人たちと店主との群像劇です。

 主人公・青山一が運転する車はポップなピンクのタコが目印で、その名も「たこ珈琲」。常に8種類のブレンドを用意しているため、8本足のタコとかけているのだとか。一際目を引くその姿から、たこ焼き屋と見間違うお客さんもいます。移動店舗というと毎週同じ時刻に同じ場所で店を開けるというイメージですが、青山の店は突然現れ、いつの間にか跡形もなくいなくなる、風変わりなスタイル。実はそれには理由があるのですが……。

 気ままな青山のもとには様々な人が珈琲を買いにやってきます。しかし、彼らが求めているのは珈琲だけではありません。日々のしがらみで疲れ切った人、満たされない何かを抱えている人など、悩める人々が安らぎと癒しを求めてやってくるのです。

©️コナリミサト/マッグガーデン

 珈琲の香りに誘われて辿りついた垣根(がきね)志麻もそのひとりです。個性的な店とイケメンの青山にたじろぎながらも、ブレンドをオーダーすることに。青山は手動で焙煎した豆を挽き、一定の量と速さでゆっくりお湯を注ぎ、フィルターにお湯が当たって雑味が出ないように珈琲豆の壁をつくるなど、一つひとつの工程を丁寧に進めていきます。

 珈琲豆がもこもこと泡立つ様子やドリップの音、鼻孔をくすぐる香ばしいにおいなど、五感を研ぎ澄ませ、ワクワクしながら珈琲を待つ垣根。彼女は「こんな風に仕事ができたらな」と思わずつぶやきます。「丁寧に誠実に」をモットーとする彼女は、手間暇をかけた手書きのお礼状を上司に否定され、「要領のいい後輩を見習え」と言われて自信をなくしていたのです。青山は淹れたての珈琲と、「見てる人はちゃんと見てくれているから大丈夫」という何気ない一言で、彼女の心をほぐします。

 その日のお客さんの気分や見た目に合わせたオリジナルの珈琲を提供することも。パワフルで希望あふれる女子高生には、見た目の華やかなピンクの珈琲を。一方、個性のなさに悩む女性には、カフェオレに香辛料を一振り。ほんの少しの勇気や非日常を体験する「生きるヒント」を珈琲になぞらえて教えます。

 今はコンビニや自販機でも美味しい珈琲を手軽に飲める機会が増えてきました。しかし、移動販売は一期一会。時間をかけて丁寧に作られるその一杯を飲む時間が、誰かのエネルギーになることがあります。そろそろホッと一息、珈琲いかがでしょう?

「珈琲いかがでしょう」で知る、珈琲の豆知識

  • 珈琲豆のランク付けは、豆の粒の大きさや生産地の標高など各国によって異なる
  • 卵の黄身と珈琲を混ぜるエッグ珈琲というものがある
  • フレンチローストの珈琲をお好みの焼酎につけるだけの珈琲焼酎は、仄かな苦みがお酒とマッチする
  • カフェオレにガラムマサラをひとふりすると、チャイのような味になる