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K-POP本ブーム、もっと盛り上げたい! 出版3社が共同でトーク&音楽イベント

文・写真:吉野太一郎

 イベントは「K-POPを語る!聴く! #春のKPOP祭り2021_1stwin」と題して、朝日出版社、イースト・プレス、柏書房の3社が主催。3部構成で約6時間の、笑いあり、トークあり、音楽ありの盛りだくさんな内容でした。

「今やこんなにK-POP本が豊か」

(左から)古家正亨さん、はしもさん

 第1部では、約20年にわたってラジオや書籍などで日本にK-POPを紹介し続けてきた古家正亨さんと、「韓流好き女子あるある」やBTSメンバーの物真似が人気のお笑い芸人、スクールゾーン・はしもさんが、爆笑トークを繰り広げました。

 「K-POP本、僕も昔出したけど全然売れなかった。今やこんなにK-POP本が豊かな国は日本ぐらいでは?」と、出版ラッシュとも言うべき状況に感慨に浸る古家さん。NCT、ENHYPENなど人気K-POPグループで日本人メンバーが活躍していることにも触れ「NiziUやJO1など(韓国式のオーディションで選抜されたグループが)日本でも登場しているけど、それでも若い子たちが『アイドルになりたい』と韓国に渡った。リスクがありながらも、世界が近いから」と、世界的な人気の秘密を分析。「20年間見聞きしてきたことを生かすため、いつか自分でアイドルをプロデュースしたい」と野望を披露しました。

 「チンチャそれな!」など、K-POPファンに刺さる新境地のギャグを開拓してきたはしもさんは、「中学時代に好きな女の子がBoAのファンだった」と、K-POPにのめりこんだきっかけを話し「日本のアイドルが『みんなで一緒に成長しよう』という感じなのに対し、K-POPはデビューした時点で完成度が高い。日本(のアイドル)も変わっていきそうな気がする」。自分の物真似でBTSを知った人もいると話し「常に新しいものを発信し続けたい」と意欲を見せました。

「予測不可能だから面白い」

(左から)まつもとたくおさん、田中絵里菜さん、桑畑優香さん、イースト・プレスの黒田千穂さん

 第2部は、3社から刊行のK-POP本の著者・翻訳者たちによるトーク。2018年にBTSがアメリカ・ビルボード誌のアルバムチャートで1位に輝く前からK-POPシーンを見続けてきた3人も「ここまでK-POPが世界的に流行するとは思わなかった」と口をそろえました。

 『K-POPはなぜ世界を熱くするのか』(朝日出版社)の著者、田中絵里菜さんは、韓国の雑誌社勤務などを経て昨年に日本に帰国したばかり。「日本に帰ってきてから、K-POPの話をしたこともなかった人がBTSにハマっていたり、今までブームは何回もあったけど、今回は広がりを感じる」と感想を述べた後、K-POPが世界で受ける秘密について「2017年ごろからSNSが定着して広がった頃から影響力が大きくなってきた。純粋に今、イケているものを取り入れているから、トレンド感があるし、面白いものを作り出している」と分析しました。

 音楽ライターのまつもとたくおさんは、20年以上見続けてきたおすすめアーティストを解説した『K-POPはいつも壁をのりこえてきたし、名曲がわたしたちに力をくれた』(イースト・プレス)を5月16日に刊行しました。「以前は個々のファンはいても、K-POPというジャンルを聞きたいという人は皆無だった。状況は変わった」と改めて驚くとともに「これからの展開も的確には予想できない。予測不可能だから面白い。いいフレーズを集めて作ったらK-POP、『受ければいいじゃん』で作っちゃうノリだから強い」。

 BTSの所属事務所HYBEや最大手芸能事務所のSMエンターテインメントなどが、アメリカを含む世界的なオーディションを計画するなど、K-POPはさらなる国際展開を視野に入れています。『BTSを読む』(柏書房)、『BTSとARMY』(イースト・プレス)の翻訳者、桑畑優香さんは、「SEVENTEENがドームコンサートを経ずにビルボード・アワードのトップ・ソーシャル・アーティストにノミネートされたように、(最近は)『大きなハコ』を経なくても世界にいく道がある」と指摘。K-POPが確立したパッケージが「アメリカで受け入れられるか、とても気になる」と期待を示しました。

版元の垣根を越えたイベント、続けたい

DJパフォーマンスをするe_e_li_c_aさん(左)とDJ DJ機器さん

 第3部は、日本のクラブシーンにK-POPを広め、盛り上げてきたDJ e_e_li_c_aさんとDJ DJ機器さんのステージを生中継。Twitterではハッシュタグ「#春のKPOP祭り2021_1stwin」がトレンド入りしました。

 企画した1人、朝日出版社の仁科えいさんは企画の趣旨について「日本では前例のないK-POP本の刊行ラッシュという機会に、K-POPについて多角的に知ることのできる空間を作りたいと考えました。トークで掘り下げ、DJらにプレイしていただくことで、本を読んで感じたことを現場で聴いて答え合わせできるイベントを用意しようと思いました」。

 観客を集めて開催する予定が、緊急事態宣言でオンラインのみになるなど波乱もありましたが、「新型コロナの影響で販促活動が難しくなっているなか、出版業界のこれからを考えたうえでも意義深いと感じています。今後もK-POPを出版から盛り上げ、版元の垣根を越えたイベントを継続して行けたらと思います」と、早くも先を見据えていました。

※イベントの動画のアーカイブは、5月22日までこちらから購入・視聴できます。

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