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シモーヌ・ド・ボーヴォワール『離れがたき二人』 旧弊に押し潰された親友の面影

 哲学者ボーヴォワールがのこした未発表のシスターフッド小説、という惹句(じゃっく)に引かれて『離れがたき二人』(関口涼子訳)を手に取った。

 主人公の少女シルヴィーは、大人の言いつけを守る優等生だったが、自由奔放なアンドレに次第に影響を受けていく。才能あふれる若き二人に立ちはだかるのは、「修道院に入るか、結婚するか」が神の思(おぼ)し召しという因習的な価値観だ。アンドレは、愛する男性との仲をくり返し母親に引き裂かれ、心身の不調を来していく。

 考えさせられてしまうのは、アンドレの母親の立ち回りだ。彼女も若い頃、好きではない男性と結婚させられた過去がある。自分を苦しめたシステムを受け入れ、今度は娘にも強要してしまうのだ。
 アンドレは、ボーヴォワールの実在の親友ザザを下敷きにしているという。フェミニズムの古典『第二の性』を著すときのボーヴォワールの胸には、アンドレ同様、旧弊的な社会によって死に至らしめられたザザのことが去来していたことだろう。(板垣麻衣子)=朝日新聞2021年9月4日掲載