インドネシア国際ブックフェアに参加しました。コロナ禍のため、淡路島の自宅から、オンラインで。今年5月にZoomデビューし、早くも国際デビュー。急速な進化です。日本の出版社の担当者も、東京の会社からオンライン参加、自宅には、私とネコだけ。大丈夫かいなと、その日を迎えます。
我が家で一番きれいな壁のある玄関に、机を置き、パソコンをセッティングしました。トークイベントは日本時間午後6時からで、万が一に備え、5時に現地の事務局にアクセスしたところ、繫(つな)がらず。どうしようと頭を抱えても、すぐに駆けつけてくれるパソコンに詳しい人の顔など誰一人思い浮かばず、ネコとおろおろするばかり。しかし、Zoomの招待状を出版社経由ではなく、私のアドレスに直接送ってもらうことで解決しました。画像の下に出る本名もペンネームに変更し(これは前から自分でできる)、現地の司会の方と通訳の方とで、無事、打ち合わせをすることができました。
そして本番。寝室にネコを閉じ込めて席に着きます。宅配便が届くのを心配していたものの、それどころではありません。近所の犬が、吠(ほ)えて、吠えて、吠えまくっているのです。「届け、オレの魂の叫び、遥(はる)かなるインドネシアまで!」といったふうに。まあいいかと、そのまま繫ぐと、司会の方の背後からは、賑(にぎ)やかな音楽が聞こえてきました。日本の焼き芋屋さんのような、移動販売車の音楽だそうで、そうか、画面の向こうは本当にインドネシアなのだなと、しみじみ……。
イベントには約500名が参加してくれ、2時間あっというま、大盛況で終了しました。あんなに賑やかだったのに、退出ボタンを押すと音も消え、いつもの玄関です。犬も吠えていません。ここが現地なら、これから打ち上げで、インドネシア料理を前に、大勢で乾杯していたのになと、ネットの可能性に感心しながらも、やっぱり行きたかったと、ネコと一緒に晩酌したのでした。=朝日新聞2021年10月6日掲載