『あなたもだまされている 陰謀論とニセ科学』
新型コロナは社会にさまざまな影響を与えているが、陰謀論の蔓延(まんえん)もその一つだ。『あなたもだまされている 陰謀論とニセ科学』(ワニブックスPLUS新書・1045円)は、こっくりさんやノストラダムスからQアノンに至るまで、古今東西のニセ科学と陰謀論を科学の面から検証した一冊。健康食品や水商品など、誰もが気になる製品についても網羅されている。著者の左巻健男氏はこれまでにも多くの関連書籍を執筆しているが、社会不安に乗じて新たなニセ科学はいくらでも現れる。折に触れて知識を更新し、リテラシーを高めておきたい。
★左巻健男<著 ワニブックスPLUS新書・1045円
『遺伝子とは何か? 現代生命科学の新たな謎』
コロナ禍によって、mRNAや遺伝子の変異といった専門用語も、日常的に飛び交うようになった。だが、広く使われる遺伝子という言葉は結局何なのか、きちんと説明しようと思うと難しい。中屋敷均<『遺伝子とは何か? 現代生命科学の新たな謎』(講談社ブルーバックス・1100円)は、メンデルの法則からエピジェネティクスまで、歴史の流れに沿いつつ「遺伝子」という言葉の持つ意味の変化を考えてゆく。シンプルに、すっきりと説明できるかと思えた生命の謎は、知識が増えるにつれて再びもやに包まれてゆく。単純ではないからこそ面白い、これぞブルーバックスというべき一冊だ。
★中屋敷均著 講談社ブルーバックス・1100円=朝日新聞2022年5月21日掲載