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見えない壁を解き明かす「なぜ理系に女性が少ないのか」 藤田結子が選ぶ新書2点 

『なぜ理系に女性が少ないのか』

 日本の女子生徒は、国際学力テストの数学の点数で世界のトップクラス。にもかかわらず、理系における女性の割合はOECD諸国で最下位だ。横山広美『なぜ理系に女性が少ないのか』(幻冬舎新書・1034円)はその理由をデータで解き明かす。女子生徒の2倍以上の男子生徒が「男は外で働き、女は家庭を守るべきだ」と思っていて、これを肯定する女子生徒は理系を希望する割合が低い。また、男性の方が数学能力が高い、と思う母親の娘は理系を専攻する割合が低い。他の要因も含め、日本の社会風土が見えない壁となり、女性の理系割合が低くなっているという。著者は、社会のジェンダー平等が進めば、理系の女性の数は増えると提言する。
★横山広美著 幻冬舎新書・1034円

『ジェンダーレスの日本史 古典で知る驚きの性』

  そんな今日のジェンダーに関わるイメージや役割は昔から続いているものとは限らない。大塚ひかり『ジェンダーレスの日本史 古典で知る驚きの性』(中公新書ラクレ・990円)は性の境があいまいであった前近代の日本の姿を描く。日本古来の伝統は「夫婦別姓」に「夫婦別墓」。平安時代には男も泣くべき時には人前で涙を見せた。古典文学にはLGBTの話も。「伝統的」とされていることが実は戦前や明治期、せいぜい江戸時代に始まっていて、さほど歴史があるとは限らないという。目からうろこの話が満載だ。
★大塚ひかり著 中公新書ラクレ・990円=朝日新聞2022年12月10日