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ドラマ「僕らのミクロな終末」主演・瀬戸利樹さん&中田圭祐さんインタビュー 地球滅亡前の愛を描いたBL人気作

「僕らのミクロな終末」より(©️丸木戸マキ/祥伝社 ABC)

ワクワクドキドキしながら原作を読んだ

――BLとSFの要素を持ち合わせた本作ですが、原作を読んでみていかがでしたか。

瀬戸利樹さん(以下、瀬戸):「地球滅亡」というだれもが興味を抱く題材の中で、一番会いたくなかった人と再会し、10日間で1つの愛の形を描いていくというストーリーは、僕の中で好きな要素しかなかったです。官能的なラブシーンもありながら、若者たちの青春群像劇というのが楽しくて、ワクワクしながら原作を読みました。

中田圭祐さん(以下、中田):「あと何日で地球が滅亡するか」という題材はよくあると思うんですけど、丸木戸先生の描く「地球滅亡」とはどういうことなのかと、ハラハラドキドキしながら読む手が止まりませんでした。限られた時間と世界の中で、だれのためにどう動くかといったことが繊細に描かれているなと感じたので、演じる上でもそこを大事にしたいなと思いました。

――死にたがっていた高校生・遊馬らとの珍道中といったコメディー的な部分もありながら、不意に核心を突くような言葉やセリフがあったなと思ったのですが、お二人が特に印象に残っているセリフを教えてください。

瀬戸:僕は遊馬たちとの旅の途中で泊まることになったログハウスで、薬を飲んで死のうとした律に対して「お前なんか死んじまえ!!」と、ちょっと汚い言葉を使ってしまうシーンですね。大切な人だからこそ、失いたくないからこそ、そういう言葉を言ってしまうのは深いなと思ったし、真澄なりの独特な愛を表現した言葉だと感じて、すごく印象に残っているセリフでした。

中田:「(地球滅亡までの間なら)真澄以外とは絶対ヤらないって約束できるけど、それならいい?」といったセリフがあるのですが、それを真剣に言う律の、ある意味素直な一面が見られたというか。律はだれとでも関係を持つクズな男だけど、あと何日かで地球が滅びるという時にそれを言うのって結構すごいなと思います。あとは、2人が打ちとけていく中で律がこぼした本音みたいなのものもちょいちょい出てきて、そういうところも人間味があって好きですね。

人の数だけ愛の形があって、正解はない

――昨今は実写化作品も含めてBL作品が豊作ですが、これまで何かご覧になった作品はありますか?

中田:「君の名前で僕を呼んで」という、1980年代のイタリアを舞台に、17歳と24歳の青年の、ひと夏の恋を描いた映画を見たことがあります。ティモシー・シャラメと、アーミー・ハマーという俳優がカップルを演じているんですけど、映像がすごくキレイだし、自分の中の価値観が膨らんで物事を柔軟に考えられるようになって、BLの見方が変わるきっかけになった作品でした。

瀬戸:「僕ミク」原作者の丸木戸マキ先生の「ポルノグラファー」と、「チェリまほ」(「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい」)、「おっさんずラブ」を見たことがあります。「ポルノグラファー」は、今作の監督でもある三木(康一郎)さんの世界観を感じておいた方がいいと思ったので、この作品の撮影に入る前に拝見しました。

――「BL」というジャンルの作品に、どんな印象やイメージを持たれましたか? また、男性に恋愛感情を持つ役を演じるうえで何か心がけたことがあれば教えてください。

中田:性別にこだわらず、ただ愛した人が同性か異性かというだけのことなんだと思います。人の数だけ愛の形があってよくて、それに正解はないし、さまざまな解釈があると思いました。今回の作品でも感じましたが「大切な人を思い返してみたらあなただった」という感覚を自分の中でも養えたらいいなと思いました。僕らは同い年なのでお互いの意見を言いやすかったり、プライベートの話も弾んだりして、自然とその関係性が演技にもつながったんじゃないかなと思います。

瀬戸:僕はBL作品に出演するのは今回が2作目なんですけど、中田くんが言っていたように好きになった相手の性別は関係なくて、役を演じる上では恋愛感情や表現は一緒なんだと思います。なので、今作もBLだからといって「こうしよう」と特別に意識したことはなかったですね。一つの恋愛青春ドラマであり、群像劇と捉えて作品に取り組みました。

あと10日で地球滅亡…誰と過ごす?

――真澄にとって律は忘れられない「初恋の人」ですが、瀬戸さんは真澄を演じていて、律に惹かれる理由はどんなところにあると感じましたか?

瀬戸:やっぱり顔じゃないですかね。見ためが自分のストライクゾーンに入っている人じゃないと「この人をもっと知りたい」という気持ちにならないじゃないですか。第1話で律と再会するシーンがあるんですけど、そこでも一目惚れのような感覚をすごく感じました。あとは言葉の含みというか、どっちに捉えていいのかわからないような感じも律の魅力なんじゃないかな。

――中田さんは律を演じていて、真澄はどんな存在でしたか?

中田:律は今まで男女問わず、いろいろな人とも体を交えてきたけど、真澄はその人たちとは何もかもが違った唯一の存在なのかなと思います。律は一見、地位もお金も持っていて華やかなイメージがあるけど、実はすごく孤独で、愛されることや愛するということがよく分かっていない。それが家庭環境のせいなのか、自分の性格なのかは定かじゃないけれど、そういう中で真澄と学生の時代に出会って、傷つけてしまったことを何年経っても思い返すぐらいの人だったんですよね。

なので、きっと律的には隕石が落ちても落ちなくてもハッピーエンドだったのかなって思うんです。真澄は自分に持ってないものを持っていて、それを守っている。そういうところを律はすごく尊敬していたと思うし、物語が進んでいく中で「自分にはこいつしかいなかった」という律の思いに説得力を感じたし、最後は真澄に思いを伝えることができたので、悔いはないのかなと思いました。

――本作のように、もし10日後に地球が滅亡することになったら、お二人はどう過ごしたいですか?

瀬戸:僕はウユニ塩湖に行きたいです。辺り一面、水に囲まれた中で最期を迎えたいかな。みんなでいるより、一人でいたいんですよ。もし残された日数が10日なら、4、5日前に会いたい人には全員会っておいて、後の3日間くらいは自分一人で 好きに 過ごしたい。

中田:僕だったら一人は怖くて耐えられないな。

瀬戸:例えば愛している人と一緒にいたとして、最後の瞬間はきっと見つめ合っているとしたら、 一瞬でも相手が苦しむ顔は見たくないもん。そのときの苦しい声や顔がその人の最後の思い出にしたくないから、いい思い出のままで終わりたいんだよね。

中田:なるほどね。僕はまだ行ったことない海外とか行きたいですね。家族や友達、 好きな人みんな誘って車でアメリカ横断とかいいかも。途中で各々別れてもいいんですよ。みんな好き勝手していいから、ギリギリまでなるべく一人でいたくない。

瀬戸:そのアメリカ横断に好きな人も家族もついてきてくれたとして、両方から「最後は抱きしめあって死にたい」って言われたらどうするの?

中田:……円陣を組むとか?(笑)

読書は台本を読み解く勉強になる

――本作は漫画が原作でしたが、お二人は普段、どんな本を読みますか?

瀬戸:最近買ったのは「アーモンド」(祥伝社)という作品です。感情が分からない少年が、祖母が通り魔に殺され母親も殺されかけて、いう内容に惹かれたのですが、そこからどうなっていくのかが今、気になっています。

中田:おもしろそうなストーリーだね。たしかに気になるかも。僕は最近気になって買ったのが、片岡義男さんの『スローなブギにしてくれ』(角川書店)という短編青春小説です。ラッパーの人が紹介していた本で「この人が読む本ってどういう内容なんだろう」と気になって買ってみました。セリフの言い回しがエモいというかすてきな言葉が多くて、今読み始めているところです。

ジャンルは特に問わず、『コーヒーが冷めないうちに』(サンマーク出版)とか人間ドラマが描かれている作品も読みます。あとはSF映画が好きなので『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』(早川書房)といった海外の作品も読んでみたんですけど、日本語訳だとちょっと難しくて(笑)。

――読書が俳優業に活かされているなと思うところはありますか?

中田:小説だとセリフの間に「なんでそのセリフを喋ったのか」という理由が書いてあるけど、台本って基本的にト書きは少しで、あとはセリフがバーッと書いてあるから、そこを読み解く基礎的な勉強になるって言うよね。それもあって、僕は事務所の人から「本を読め」とよく言われてきました。あとは活字に慣れるってことですかね。

瀬戸:それに、句読点の勉強になるよね。作者によって句読点をつける場所が違うじゃないですか。「あ、そこでつけるんだ」っていう発見は、今のこの仕事をやっていて一番勉強になっていることかなと思います。例えば「僕は君を愛している」という一文を、「 僕は」できってもいいし、「僕は君を」でもいいわけですよね。そういう固定概念をなくしてくれるし、いろいろな作者の方の作品を読んで「こういう感性もあって、すべてが一つの通りじゃないんだな」ということを、僕は本から学ばせてもらっています。