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けがでの離脱者多いけれど、全員で団結して進もう。「愛、理性及び勇気」を読んで考えた、目的地への「必要な迂回」 中江有里

 ペナントレースは早くも折り返し。
 これからさらに熱く(暑く)なる試合(野外での観戦は暑さ対策万全で応援!)

 NHKでは恒例となっている開幕前のセリーグ監督座談会を振り返りたい。
 番組が挙げたテーマのひとつが「看板バッター」だった。チームの看板バッターを各球団ひとり挙げていく。
 藤川球児監督が名を挙げたのは佐藤輝明選手だ。
 期待に違わず昨年を上回る打率をキープし、打点もトップ。
 本塁打は森下翔太選手に注ぐ2位。うちの〝アイブラックブラザーズ〟、ほんまにすごいわ。

 さらに1年巻き戻して、2025年の同じ監督座談会で藤川監督はある指摘をしていた。
 それは広島東洋カープからの阪神タイガースへの死球の多さ。

 死球は選手が出場機会を失うだけじゃなく、選手生命にも関わる。
 2年前から藤川監督は取り返しのつかない状態を危惧していたのだろう。

 話は現在に戻る。7月17日から19日、マツダスタジアムで行われた広島阪神戦は、両チーム合わせて6死球。

 1試合目。阪神の前川右京選手が死球による右肩甲骨骨折で離脱。
 2試合目。あわやデッドボールのところ、驚異の身体能力で交わした佐藤選手。怒りから珍しくバットを放り出し、広島のハーン投手に1、2歩向かうかと思いきや、打席に戻った。しかしあえなく三振。ここは打ってほしかった!
 そして3試合目。2-2の同点。8回表2アウト1、3塁の場面。
 またもやハーンVS佐藤。
 今度は左中間を破る勝ち越しタイムリーツーベース!

 思わずテレビの前でテルコールをしてしまった。
 死球で離脱した右京の悔しさを、テルがやり返してくれた!

 大型連勝がない阪神。昨年のように突き抜けられない。
 この試合が、阪神にとって潮目の試合になるかもしれない。そんな予感がする。

 歌人・与謝野晶子のエッセイ『愛、理性及び勇気』は女性の自覚、人間性の重視など、女性をとりまく問題を鋭く批判した書だ。
 (聡明・慎重・勇気)という章の冒頭にこんな一節がある。

 「急流を横断して対岸に渡ろうとする船は、到着すべき目標に向いて決して一直線には渡りません」

 聡明な水夫なら、上流の方へ斜めに舳先を向けて漕ぎ、水勢を利用して予定していた地へ着くように計らう。つまりわざと迂回することが、もっとも合理的だということ。

 与謝野晶子は「人及び女として」の権利を勝ち取ろうとする冒険者となり、聡明な水夫から学び、川を渡る勇者となれ、と綴る。
 やみくもな勇気ではダメ。急流を漕ぎ出すためには確かな技術を持たなくてはならない。

 広島戦を逆転勝利したこの勢いで大型連勝へ、と思った翌日、横浜DeNAベイスターズに完封負け。
 世の中、そううまくはいかない。潮目の試合になってなかった。意気消沈。

 いや、こう考えよう。優勝は急流の向こう岸にある目的地。
 水夫(選手)たちは、急な流れをも利用して、そして全員の力を団結して渡るのだ。
 ペナントレースを全部勝つわけにはいかないのだし、対戦チームだって必死だ。

 こうも思う。ケガで離脱した選手は試合に出ていなくても、その悔しさを別の選手が背負っている。
 試合にいなくても、ちゃんといる。
 近本選手がいない時に忘れたことはなかったし、復帰を目指す石井大智投手も待ち遠しい。
 阪神は目的地へたどり着くため、いま必要な迂回をしている。
 そう信じて次の試合の勝利を祈り、汗だくで応援するのだ!