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「刑務所の文章教室」書評 思いを言葉にするために

評者: 古田徹也 / 朝⽇新聞掲載:2026年10月10日
刑務所の文章教室――言葉が心をほどくとき 著者:大塚敦子 出版社:紀伊國屋書店 ジャンル:司法・裁判

ISBN: 9784314012164
発売⽇: 2026/07/10
サイズ: 18.8×1.8cm/256p

「刑務所の文章教室」 [著]大塚敦子

 「もし自分の正直な思いを言葉で表現できていたら、罪を犯すにはいたらなかったのではないかと思うような人たちに数多く出会ってきました。」――そう語る著者は本書で、自身が刑務所で開催してきた文章教室の内容と、そこから見えてきたものを生き生きと描き出している。
 その教室は非常に実践的だ。たとえば、自分の気持ちを天気にたとえる、文章に穴埋めするかたちで詩を書く、既存の物語の続きを書く、等々。そうした多様な手法により、一行目を書き始める難しさを和らげながら、自分にも書ける、言葉にするのは面白い、という実感を受講者が得られるよう工夫している。
 また、以上のような取り組みが常にグループワークの形式で行われているのも特徴的だ。単に文章を書くだけではなく、互いに他者の言葉を受けとめ合う経験が肝心だと著者は強調する。その経験こそが、自他の思いに気づき、自分の世界を広げるための、きわめて重要な契機になるというのだ。読み書き自体をAIに頼りがちになったこの時代に、幾重にも示唆に富む著作である。