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「月たった2万円のふたりごはん」 愛の料理で胃袋わしづかみ

月たった2万円のふたりごはん [著]奥田けい

 眞子さまの婚約者であらせられる小室圭さんが購入したことで話題になり、大ヒットしている料理本。もしやお姫様に月2万円の食生活をさせるおつもりでしょうか?と一部で物議をかもしていました。著者の奥田けいさんが旦那さんの胃袋をつかんだ、安さとおいしさを兼ね備えた料理の数々が収録されています。イラストのタッチもかわいいです。それにしても、賢く節約できて料理もうまいなんて、良妻の鑑(かがみ)です。
 例えば、とにかく安い切干(きりぼし)大根を使った「切干大根とワカメのサラダ」、お麩(ふ)でかさを増した「お麩入りバーグ」、「節約の戦友」の納豆を生かした「納豆炒め丼」など……。手順が少なかったり、レンジで加熱できたりと、料理が苦手な人にも優しい内容。ためしに「もやしのナムル」を作ってみました。だししょうゆやごま油、もやしなどシンプルな材料で簡単にできました。仕上げは味付けのりで、安い割にはおしゃれな味に。
 それにしても、レシピの説明文の随所に旦那さんへの愛がほとばしっています。「旦那さんの第一声が『これ好き! また作って!!』でした」(揚げどりの柚子胡椒〈ゆずこしょう〉ソース漬け)、「いまだにこの料理を『今日作るよーっ』と言うと喜んでくれます」(ナスの揚げびたし)、「晩ごはんがこれだと急いで帰ってきます!」(あつあげのみぞれ煮)、「私たちにとって味覚が合うことは一番重要なことだったのかもしれません」(お母さん直伝おうちカレー)など、作る前からごちそうさま!という感じです。「おわりに」には「旦那さんの胃袋を掴(つか)みっぱなしです(多分)」と書かれていて、満腹感が。
 「男性はあんかけや揚げものが好き」など勉強になり、女性の幸せについて考えさせられる本でした。ちなみに奥田さんはテレビのインタビューで、本が売れて生活が一変したというようなことをおっしゃっていました。次回はぜひ2万円と言わず「月たった10万円のふたりごはん」でも……。
 辛酸なめ子(コラムニスト)
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 幻冬舎・1080円=3刷9万部。17年8月刊。婚約会見後は一時品切れになったが数日で増刷され書店に並んだ。料理初心者の年配男性にも「イラストが多く字も大きい」と高評価。=朝日新聞2017年11月5日掲載