「ペテン師と天才—佐村河内事件の全貌」書評 “現代のベートーベン”2人の真実
評者: 朝日新聞読書面
/ 朝⽇新聞掲載:2015年01月25日
ペテン師と天才 佐村河内事件の全貌
著者:神山 典士
出版社:文藝春秋
ジャンル:エッセイ・自伝・ノンフィクション
ISBN: 9784163901848
発売⽇: 2014/12/12
サイズ: 20cm/321p
ペテン師と天才—佐村河内事件の全貌 [著]神山典士
著者は、ほぼ1年前の「週刊文春」に掲載された「全聾(ろう)の作曲家佐村河内守はペテン師だった!」のメインライター。タイトルの「天才」は、“現代のベートーベン”が創ったとされてきた音楽の真の作曲家、新垣隆氏を指している。
虚名のもと、足かけ18年に及んだ2人の関係が壊れる直接のきっかけは、右ひじから先がないバイオリン少女「みっくん」一家とのあつれきだった。少女の素直な思いに照射され、悪と善、虚と実へとおのずと分かれていく様子がメールのやりとりを通し克明に再現されている。突然光の中へ躍り出て、不思議なブレークを見せた内気な天才の魅力と弱点についても、いいあんばいで押さえてある。
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文芸春秋・1620円