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男であるという“秘密”を抱えて

『カラーレスガール』(1) [著]白野ほなみ

 ここ2~3年、美大にスポットを当てたマンガやルポ本の類が増えている。特別な才能、社会通念に縛られない世界への憧れと興味が、その背景にあるのだろう。
 本作の舞台も美大である。服装からして個性的な〈「自分」を表現する事にプライドをかけた人たち〉が堂々と闊歩(かっぽ)する。そんなキャンパスに居心地よさを感じる美大生アオイだが、自身は常にフェミニンな服に身を包みメイクも完璧な“愛され系”だ。
 それはしかし、本当の自分を隠すための鎧(よろい)だった。実はアオイは戸籍上は男。幼い頃から心と体の性が一致せず、自己肯定感を抱けずにいた。そんな彼/彼女が美大で出会った友人たちとの交流で少しずつ解放されていく。
 この友人たちのキャラがとてもいい。長身クールビューティのリカコ、ちびっこ童顔で中学生みたいなめぐ。その対照もナイスだが、男であるという“秘密”がバレたと思って狼狽(ろうばい)するアオイへの態度が最高すぎて泣けてくる。
 リカコら視点のエピソードもあり、それぞれの葛藤を丁寧に描く。何らかの生きづらさを抱える人にとって美大は一種のシェルターなのかもしれない。簡単には入れないのが珠(たま)に瑕(きず)ではあるけれど。南信長(マンガ解説者)=朝日新聞2018年9月1日掲載