昨年の全国約12万人の小学生が選ぶ「“こどもの本”総選挙」で、トップ10に『あるかしら書店』や『りんごかもしれない』など4作品が入った。本書はそんな破竹の勢いが続く、人気絵本作家によるイラストに解説がついたエッセー集だ。
素顔はネガティブともいえる人。「幼い頃から劣等感が強く、ついつい悩みがちなんです」。普段、面白いと思ったことや考えていることをイラストにしてメモしている。「元々は、世の中は捨てたものじゃないと自分自身を励ますために、面白がろうとした記録です」
講演などをした際、余った時間でイラストにコメントをすると、思いのほか好評だった。それがきっかけで本書に語りおろした。
育児に関する章では、2児の父であることをいかして、「ねえ、うんちついてる?」とお尻を無防備に見せる子どもについて描くなど、ほのぼの。一方、自分を含め人間の弱さに目をこらした点も際立つ。
例えば、会社の上司らしきイラストには〈その時 その時に その場にいない人を悪者にしながら なんとかのりきっていこうじゃないか〉と言葉を添えた。著者はそんな弱さを認めて、これは社会人の仕事のスキルの一種だと面白がる。「嫌なことは多いと思う。かといって場を荒立てたくない。読んでもらっても、事態は解決しないけれど、『そうだよね』という共感はあると思うんです。そう言ってくれれば、僕自身助かるし、自分のような人も緊張や気が抜けていくはず」
あるあるネタを集めることで、人間の人間らしいところが見えてきたという。「人の弱さは、他人と思っているほど違わないと思う。弱さは弱さだけど、仕事にしている僕のように使い道もある。そのグレーの部分に人の面白さはつまっているのかな」(文・宮田裕介 写真・池永牧子)=朝日新聞2019年4月13日掲載
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