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鈴木俊二さん、乙黒美彩さん「最新 ワインの科学」インタビュー 「偶然」の裏に隠れたもの

山梨大ワイン科学研究センターの乙黒美彩教授(左)と鈴木俊二教授=甲府市、池永牧子撮影

 ブドウの果実を発酵させることは「錬金術」だという。ビールや日本酒に必須の水さえ不要なのに、多様な香りや味わいがどう生み出されるのか。そのメカニズムを、ブドウ栽培学が専門の鈴木さんと、応用微生物学や醸造学が専門の乙黒さんが科学的な見地にこだわってつづった。

 世界のワイン産業は曲がり角にある。気温上昇でブドウが早熟化すると、酸度不足や糖度過剰が起き、病害も増える。銘醸地でも標高の高い場所に畑を移したり、品種の変更を迫られたり、味に直結する課題に対応している。

 明治期から150年近いワイン造りの歴史がある山梨をはじめ、国産ブドウが原料の日本ワインの産地も例外ではない。「フランスでもいいブドウが作れず減産に陥っている。どう立て直すのか。次の世代に課題と現状を専門書ではない形で残せれば」。鈴木さんがそう考えていたところ、執筆依頼があった。

 ワイン造りに欠かせないのが微生物の力だ。ブドウを潰して放置すればやがてワインになる。しかし、そこには酵母をはじめとする微生物が介在し、働きが味を左右する。

 たとえば発酵途中で乳酸菌を加えると、果汁に含まれる鋭く刺激的なリンゴ酸が乳酸に変わり、まろやかな口当たりが生まれる。乙黒さんは「偶然のように見える変化にも必ず科学が隠れている」。

 最新研究にも触れた。ブドウの木に宿る微生物を品種と産地ごとに分析。日本固有の甲州ではどこも似ていた半面、国際品種のシャルドネでは地域によって違いが確認された。ブドウ産地の気候や土壌、造り手がワインの味に及ぼす相互作用「テロワール」の正体解明につながるのか。鈴木さんは「ワイン研究で最後のピースになるでしょう」と話す。科学で説明しきれないのもワインの持ち味だ。

 戦後間もなく創設された山梨大のワイン研究機関でともに教壇に立つ。銘柄を見れば、各地で醸造を担う卒業生らの顔が浮かぶ。ワインの味を決めるのはブドウの質か醸造技術か。この話になると、2人の議論は尽きない。(文・伊藤宏樹 写真・池永牧子)=朝日新聞2026年6月13日掲載