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「明智光秀・秀満」書評 「本能寺の変」の動機、縦横無尽に解説

評者: 諸田玲子 / 朝⽇新聞掲載:2019年07月20日
明智光秀・秀満 ときハ今あめが下しる五月哉 (ミネルヴァ日本評伝選) 著者:小和田哲男 出版社:ミネルヴァ書房 ジャンル:伝記

ISBN: 9784623086566
発売⽇: 2019/06/14
サイズ: 20cm/263,11p

智光秀・秀満 ときハ今あめが下しる五月哉 [著]小和田哲男

 昔、最初に調べたころは朝廷黒幕説が注目を浴びていた。何年か後には四国の長宗我部氏討伐を迫られたのが主たる原因だとする説が浮上していた。明智光秀が1582年のあの「本能寺の変」を起こした動機である。歴史は生き物のように時々刻々と姿を変える。学説が次々に塗り替えられて、既成概念もあっけなくくつがえされてしまうので、私などなにを拠り所にしたらいいのか、いつも迷ってしまう。そんな私にとって著者は頼れる師だ。様々な仮説から現在の説に至る変遷を丁寧に、ときには大局的かつ俯瞰的に、わかりやすく解説してくれる。
 そもそも明智光秀は出自からして謎が多い。娘婿の秀満もなじみが薄い。なぜなら彼らは敗者だからだと著者は言う。本書は勝者の記した歴史に疑問の目を向け、縦横無尽に二人を見つめ直した貴重な一冊。来年の大河ドラマの主人公に決定して関連本があふれ、なにを読むか迷っているあなたにぜひおススメしたい。