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「コートールド美術館展 魅惑の印象派」を深く読み解く4冊 マネ、モネ…画家たちの生きた時代と素顔を知る

エドゥアール・マネ《フォリー=ベルジェールのバー》1882 年 油彩、カンヴァス コートールド美術館 © Courtauld Gallery(The Samuel Courtauld Trust)

  1. ベラミ [著]モーパッサン
  2. エドゥアール・マネ 西洋絵画史の革命 [著]三浦篤
  3. 世界名画の謎 作品編 [著]ロバート・カミング
  4. 画商の想い出 [著]アンブロワーズ・ヴォラール

(1)『ベラミ』は、1885年に出版されたフランスの作家モーパッサンによる小説です。舞台は19世紀末のパリ。戦争から帰還し困窮に苦しむ主人公が、その美貌(びぼう)を武器に上流階級の女性たちに取り入り、権力の頂点にのし上がっていく物語です。1870~80年代のパリの様子が生き生きと伝わる、と大橋さんは話します。

 「展覧会のメインビジュアルにもなっているマネの『フォリー=ベルジェールのバー』についてお話しするときに、よくこの小説を紹介しています。フォリー=ベルジェールはパリのミュージックホール。当時、次々と作られた人気スポットでした。マネの絵画だけを見ると、高級バーのようにも見えますが、実は上流階級だけでなく、芸術家や娼婦、労働者などさまざまな人たちが集う、大衆娯楽の殿堂とも言うべき場所でした。『ベラミ』の冒頭、主人公のデュロワが、元戦友とともにフォリー=ベルジェールを訪れる場面では、たばこの煙が漂う店内に、あらゆる客が訪れている様子が描かれています。マネの作品は1882年に発表されているので、ほぼ同時代の様子だと言えるでしょう。描かれているのがいったいどんな場所で、当時どんな雰囲気だったのか、小説の描写を通じて絵画の周辺まで想像することができます」

(2)印象派をはじめ、どのグループにも属さず、サロン(官展)は落選の常連。マネは常にスキャンダラスな作品を発表し続けました。フランス近代美術が専門の三浦篤氏は『エドゥアール・マネ 西洋絵画史の革命』で、そんなマネの作品が持つ魅力と、後の現代アートにまで引き継がれる影響について迫っています。

 「『印象派の父』『近代絵画の父』と呼ばれるマネですが、印象派の画家として人気の高いモネやルノワールに比べると、ひと言でどんな画家かを表現することが難しい。この本には、マネの創作活動と後世の美術への影響がわかりやすくまとめられています。前半は、ラファエロやティツィアーノ、ベラスケスといった過去の巨匠たちの作品を参照しながらも独自の手法を獲得し、新たな表現を追求したマネの創作について。後半は、マネの作品がピカソ、デュシャンに至る後の現代美術にいかに影響を与えたのかを論じています」

エドゥアール・マネ《アルジャントゥイユのセーヌ河岸》1874年 油彩、カンヴァス 個人蔵(サミュエル・コートールド旧蔵、コートールド美術館に長期貸与)© Courtauld Gallery (The Samuel Courtauld Trust)

 「互いに親交のあったマネとモネ。マネがモネ一家を訪ねた際に描いた『アルジャントゥイユのセーヌ河岸』には、モネの妻と息子とされる2人が登場します。印象派には参加しなかったものの、この作品にはモネからの影響もあり、印象派の表現が見てとれます。」

(3)『世界名画の謎 作品編』は、14世紀以降の美術史の展開を各時代の名作でたどる1冊。本展の出品作品も収録されています。A3変型判と大型で、見開きページに大きく掲載された作品画像は見応えがあります。

 「今回の展覧会図録の構成を考える際に参考にした本でもあるんです。『読み解く』をテーマにした本展は、図録の中で美術史研究や科学的調査の成果をどのように見せ、伝えるかが課題でした。この本は、作品を大きく掲載するだけでなく、絵の細部にも注目し、解説しています。例えば、人物画であれば手先であったり、持ち物であったり。細部を知り、改めて全体を見ると、作品の印象が変わるかも知れません。ボッティチェリの『ヴィーナスの誕生』やピカソの『ゲルニカ』など幅広く紹介されていて、長い美術史の中で、印象派がどのように生まれたのかを知ることもできます。展覧会を見て、絵画の『読み解き』に興味を持った方、より印象派や美術史について知りたいと思った方におすすめです」

ポール・セザンヌ《キューピッドの石膏(せっこう)像のある静物》1894年頃 油彩、板に貼られた紙 コートールド美術館 © Courtauld Gallery(The Samuel Courtauld Trust)。『世界名画の謎 作品編』にも収録されている

(4)モネやドガ、ピカソら印象派、ポスト印象派の画家たちを援助し、個展を開催して世界に発信したパリの画商、アンブロワーズ・ヴォラール(1866-1939)。『画商の想い出』は、画家やその家族、関係者たちとの交流をヴォラール自身がつづった回想録です。数々の名作を残した画家の、生身の姿を垣間見ることができます。

 「モネ、ルノワール、ドガ、セザンヌ。交流のあった画家たちとのエピソードがエッセー調でつづられており、気軽に読むことができます。名画を残した著名な画家たちを、一人の人間として感じさせてくれる本でもあります。例えば、ドガは気に入った絵を直接触ってしまうのが自身の愛情表現だったようで、ルノワールを酷評しながらも、実はその絵を指で“愛撫する”ほど気に入っていた。そんなささいな画家たちの姿を、ヴォラールは書き残しているんです」

ピエール=オーギュスト・ルノワール《アンブロワーズ・ヴォラールの肖像》1908 年 油彩、カンヴァス コートールド美術館 © Courtauld Gallery(The Samuel Courtauld Trust)

 「ヴォラール自身についての記述もあります。購入した作品に、その後高値がついたとか、つかなかったとか、当時の画商の様子がリアルに伝わってきます。少しですがコートールドも登場しているんですよ。また、本展にはルノワールが描いたヴォラールの肖像画が展示されています。ヴォラールは、いろいろな画家のモデルを務める中でも、ルノワールとの時間は楽しいものであった、とこの本の中で振り返っています」

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心に響く 印象派画家の言葉46 [編著]Moderna Classica

 ルノワールやモネ、セザンヌ、ゴーギャン、ゴッホといった、印象派・後期印象派の画家たちの残した言葉を集めた名言集。創作の陰で苦悩や葛藤、試行錯誤を重ねたであろう画家たちの言葉を「原点に帰るための言葉」「現状を打破する言葉」「勇気が湧いてくる言葉」といった7テーマで構成した。本展覧会の第1章「画家の言葉から読み解く」の展示でも、ゴッホやモネ、セザンヌらの作品を彼ら自身の言葉とともに紹介している。芸術家たちの言葉に触れ、新たな見方で作品鑑賞を楽しんでは。