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七海仁・月子「Shrink~精神科医ヨワイ~」 デリケートな心の不調を軽やかに

 このまんがのテーマは精神医療。精神科医を主人公に、パニック障害、うつ、発達障害など、心の問題にまつわるドラマが描かれる。というと、ひどく重苦しい内容かと思うが、のほほんとした主人公の穏やかな持ち味もあり、軽やかで読みやすいエンターテインメント作品になっている。もちろん、このテーマを軽々しく扱っているわけではない。むしろ正面から受けとめているからこそ、それを特異な問題として扱わずに、カジュアルな描き方がなされている。精神の病は、他の病と同じく、誰も無縁ではいられない。精神病と書くと深刻そうだが、心の不調ぐらいは誰にでもある。では病と、単なる不調との境目はどこにあるかというと、簡単に決められるものでもない。強い個性は、その人の特性なのか、それとも障害なのか。これも単純には分けられない。たぶん誰でも幾分(いくぶん)かは当事者なのだろう。そう思ってみれば、精神病は日常の問題として、身近なものに見えてくる。

 デリケートな問題を含むこのテーマを、自然であたりまえに描いてみせるのは簡単なことではなかったはずだが、その苦労を感じさせない親しみやすさ。予備知識なしで気軽に入っていける作品だ。=朝日新聞2020年2月15日掲載