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明治開拓期の北海道で繰り広げられる人間ドラマ 浮穴みみ『楡の墓』

著・浮穴みみ

 明治維新後、新天地を求めてさまざまな人間が北の大地を目指しました。開拓に燃える役人、戊辰(ぼしん)戦争に敗れた武士、郷里を追われた人々……。本書は、歴史時代作家クラブ賞受賞作『鳳凰の船』に続き、明治開拓期の北海道を舞台にした短編集です。

 石狩原野の治水を主導する大友亀太郎と、開墾に励む青年の成長を描く表題作。大友が通した用水を無視して、原野に都を築こうとする開拓判官の行く末を描いた「雪女郎」。また「七月のトリリウム」では、開拓長官・黒田清隆と札幌農学校初代教頭のクラーク博士が船上で教育議論を闘わせます。

 全編で北海道開拓使に名を刻んだ者たちが躍動し、時代に翻弄(ほんろう)された人々の悲哀や希望を伝え、読み応え十分です。

定価1500円+税 双葉社 03・5261・4818(営業)