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光嶋裕介「つくるをひらく」 創作現場の「あの感じ」を追体験

 『つくるをひらく』は、建築家の光嶋(こうしま)裕介さんが、創作の第一線で活躍する5人との連続公開対談をまとめたものだ。

 対談相手は、ミュージシャンの後藤正文さん、思想家の内田樹さん、作家のいとうせいこうさん、現代美術家の束芋(たばいも)さん、写真家の鈴木理策さん。音楽、活字、アート、写真とさまざまな分野の創作現場を追体験できて楽しい。

 後藤さんは音楽の良さについて「『あの感じ』って書くしかないものを、『あの感じ』のままやりとりできる」。内田さんは「内なる個性を作品で外に表現するというのではなくて、外に出た作品を見て、自分がなにものであるかを知る」と説く。束芋さんは非道徳的な作品をめぐり、「芸術家であることって、自分のことを『赦(ゆる)す』ことな気がするんです」。

 ページを繰っていると、5人の作品に実際に触れたくなる。和紙や金箔(きんぱく)を使ってドローイングを描く著者は、結びで「頭で考える意識に頼りすぎないで、身体で考える無意識に主導権を譲ること」が大切だと記す。(吉川一樹)=朝日新聞2021年3月6日掲載