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正統と前衛が均衡、作品集『大地の建築 アンサンブル・スタジオ』

『大地の建築 アンサンブル・スタジオ』から。米モンタナ州のランドスケープの構造体の一つ。写真=イワン・バーン

 広大な荒野に、二つの「巨石」が支え合って立ち上がる。驚異的な自然の力、例えば地殻変動で生まれた存在のようにみえる。

 だがこれは、スペインの建築チーム「アンサンブル・スタジオ」が、米国で手がけたものなのだ。この作品集には、同様の構造物が次々と登場する。東京のTOTOギャラリー・間では個展も開催中だ(9月12日まで)。

 本書の最初の一文は、「建築は地球から生まれる」だ。確かに建築の素材は、木でも石でも鉄でも地球産だ。そのことを、地球と一体化したような造形で見せているのだろうか。木を使うといった、流行の自然共生型デザインに比べ、はるかに過激で前衛的だ。

 ただしこの「巨石」は、鉄筋コンクリート造。大地にくぼみを掘って鉄筋を敷き、セメントを流して固まったら、立ち上げる、という造り方だ。巻末の作品リストを見ると、剛直ながら正統派のモダニズム建築と思える作品も多い。正統と前衛の均衡も興味深い。=朝日新聞2021年7月17日掲載