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タレント・青木さやかさんが『母』を出版 「ただ一緒にいること」が難しかった 

青木さやかさん

 確執のあった母と向き合い、母に対して感じてきたことを書きました。国語教師だった厳格な母は、私に固定観念を押しつけ、褒めてもくれなかった。母との問題が軸になって、自分自身を愛せなくなり、人間関係にも大きな問題を抱えました。

 周りからよく「上京したら、子どもができたら、親に感謝するよ」と言われましたが、全部ダメでした。親孝行はしたんです。箇条書きすれば、旅行に連れて行き、お金を贈り、孫に会わせ――。ただ、それらを不機嫌さのなかでやっていました。

 あるとき友人から「親を大事にするのは道理」と教えられて。それで最後の挑戦と思い、母のいたホスピスに通い始めました。必ずミッションを決めて挑むんです。「今日はマッサージしてあげよう」「今日はあのことを謝ろう」って。一番難しかったのは、たわいのない会話をすること。何げない空気感、ただ一緒にいることでしたね。

 結局、亡くなる前に仲直りできて、感謝することもできました。それまで私は母が一方的に悪いと決めつけてきたけど、自分も相当やっかいな目で母を見ていたんだなと。いま、私が自分の娘と関わるなかで、私のなかに母を感じることがよくあります。意見を押しつけるところ、丁寧な言葉遣いをするところ。昔は自分のなかに母を感じるのが嫌だったけど、いまは懐かしく感じます。私より若くて忙しかったときの育児は、そりゃあ必死だったでしょうね。

 娘には、私の母とは正反対で「勉強なんてできなくたっていいのよ」って言っています。でも娘からは「ママといても頭良くなんない」って怒られます。私も母と同じで娘に押しつけてしまう。だから、ちょっと上のお姉さんという気持ちで娘の話をよく聞くよう心がけてます。

 (聞き手・森本未紀 写真・横関一浩)=朝日新聞2021年7月21日掲載

青木さやかさんのサイン