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現場に住み込み徹底取材した「ホス狂い」など藤田結子が選ぶ新書2点

『ホス狂い 歌舞伎町ネバーランドで女たちは今日も踊る』

 なぜ今、若者たちは歌舞伎町に集まるのか。宇都宮直子『ホス狂い 歌舞伎町ネバーランドで女たちは今日も踊る』(小学館新書・990円)は、現場に住み込むという、社会学の参与観察と同様の方法で取材したルポ。今のホストの客は以前と様変わりし、幼いファッションの若い女性が多い。SNSが敷居を低くしたという。「ホス狂いユーチューバー」のあおいさんは母が出奔し、虐待する伯父や祖父の家を転々とし、東京に来た。寂しさから「ホス狂い」の女の子たちと暮らしたが、妊娠に気づかず風呂場で出産した子も。女性たちはホストのために夜職で稼ぎ数百万円を貢ぐ。課金すれば「愛情」が手に入る歌舞伎町は彼女たちの居場所だという。この親密圏をめぐる若者の物語から、調査研究やいっそうの支援にも繋(つな)がってほしい。
★宇都宮直子著 小学館新書・990円

『日本の中絶』

 塚原久美『日本の中絶』(ちくま新書・990円)は、6月に米最高裁でロー対ウェイド判決が覆され関心を集める中絶について、日本の現状を知るための一冊。日本では海外と比べ、避妊ピルが高額で、予定外の妊娠をしやすい。しかし、海外で普及する経口中絶薬はいまだ承認されず、中絶手術は高額で、罪の意識が根強いと指摘。日本の中絶が女性の人権より、女性差別的なイデオロギーによって構築されてきた経緯を紐解(ひもと)く。
★塚原久美著 ちくま新書・990円=朝日新聞2022年8月27日掲載