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小林昌樹「調べる技術 国会図書館秘伝のレファレンス・チップス」 参照すべき情報源と出会える

 「調べ物においてキチンと答えを出す」には「情報源」を制するのが近道。「検索語」だけに頼っていては雑多な情報の中で迷子になるばかりである。

 「調べた情報」をテレビ番組などに提供するリサーチャーは「情報源」が生命線。仕事柄、司書のレファレンス(調べ物相談)に助けられた経験は多い。特に著名人の家族史をたどる番組の取材では、秋田・京都……多くの地域図書館で、調査に活路を見いだしてもらった。

 館内蔵書にとどまらず、インターネット検索でも「アタリをつける」勘どころがすごいのだ。膨大な資料と対峙(たいじ)する国会図書館司書であれば、そのテクニックの集積も更にすさまじかろう。本書にはそんな秘伝・奥義が、ズラリと並んでいる。比喩ではなく、巻末の「索引」に本当にズラリと並んでいる。

 実は私、「索引」付きの本を収集する癖があり、三千冊くらいは手元にある。「索引」には、ちょっとうるさい。

 「索引」の構成や語句選びからは、著者のメッセージ、本のスタンスなどが浮かび上がり、本文を読む前に内容を想像するのが楽しい。で、本書の「索引」であるが、ブラボー!なのだ。本文へのワクワクを強く誘う。

 いくつか紹介すると……「ドキュバース(文章宇宙)」といった難解用語から「アイドル研究」など身近な話題、「わらしべ長者法」のようなオリジナル技法、「全米が泣いた」という、「なぜこの本で?」といったトピックスまである。

 多彩な「参照すべき情報源」と邂逅(かいこう)できる本書は、誰にとっても頼もしい。多数の固有名詞の採録は、実用書のみならず、「調べもの史」の読み物としてもとても面白かった。

 今や「調べる」は日常生活の中に完全に溶け込み、「一億総検索時代」。手軽に情報を手にできるからこそ、「レファレンス力(りょく)」を磨いて、「確かな情報」が得られる「情報源」へのアプローチを究めたい。=朝日新聞2023年2月18日掲載

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 皓星(こうせい)社・2200円=6刷2万5千部。昨年12月刊。「リポートを書く学生や、調べ物をする企業人などに読まれている」と担当者。