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雑誌「歴史人Kids」 暗記にしない工夫がたくさん

「歴史人Kids」

 子どもの頃、歴史が苦手だった。ひたすら暗記させられるばかりで苦痛でしかなかった。今でも年号などさっぱり覚えておらず、明治維新が何年かも忘れたぐらいだ。

 だが、歴史が嫌いだったかというと、そうではなかった気がする。なにしろ小学校時代にNHKのテレビ人形劇「新八犬伝」を見て、あまりの面白さに作家を志したぐらいだし、その後も『太平記』や『宮本武蔵』を読んでワクワクし、最近も大河ドラマ「鎌倉殿の13人」にどっぷりハマった。根はむしろ歴史好きと言えるかもしれない。

 「歴史人Kids」は昨年創刊したばかりの親子向けの歴史エンターテイメントマガジン。子どもの頃、歴史に100%のめりこめなかった自分は、当時読みたかったのはどんな雑誌だろうか、と考えながら読んだ。

 気になるのはどのように歴史の面白さを伝えるかだ。歴史好きクイズプレーヤーのインタビューで、歴史は暗記するだけで点が取れるから好きだったとコメントがあり、暗記で挫折した自分としてはそこは賛同できなかった。

 年号のゴロ合わせを紹介するページにも、そもそも年号なんて覚える必要ある?とつい反発してしまう。昔は“いいくにつくろう鎌倉幕府”だったのに、いつの間にか“いいはこつくろう”になっているのも信用ならない。ただ暗記に苦労した者としてはこのページは逆に助かる。

 統率力などのチャートつきで武将を紹介する最新号の第1特集「戦国武将最強ランキング」は、武将をカードゲームのキャラクターのように見立てることで馴染(なじ)みやすさを狙ったのだろうか。戦国時代はゲーム向きなので、入り口としていいアイデアかもしれない。知らない武将も登場し大人の私も興味深かった。

 他にも「新選組 性格診断チャート」や、こんがらがった応仁の乱を図や年表を用いて解読する「室町しんぶん」、コロンブスと伊藤博文の「しくじり伝記」、吉野ケ里遺跡の発掘調査を解説した「新発見歴史NEWS」など、幅広い時代に目配りしつつ、あの手この手で興味を掘り起こそうとする姿勢がうかがえる。

 そんななか、個人的に一番手応えを感じたのは第2特集だ。テーマは紫式部。今年の大河ドラマ「光る君へ」に連動した内容で、漫画がドラマの背景を補完してくれていてわかりやすい。自分なりに子ども時代を思い返すと、歴史に惹(ひ)かれるかどうかは、物語として見たときの面白さが重要だった気がする。なので、こんなふうに登場人物の関係性から時代背景を含め、状況を厚めに紹介してもらえると興味が増していく。

 誰もがたったひとつの物語で歴史好きになる可能性がある。そう考えるとこんな特集が増えてほしい気がするが、興味の持ち方も、当時の子どもと今の子どもとでは違うのだろうか。=朝日新聞2024年1月6日掲載