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「パンどろぼう」シリーズの柴田ケイコさんが堂々の第1位! 第16回「MOE絵本屋さん大賞2023」贈賞式レポート

柴田ケイコさん=松嶋愛撮影

1位:柴田ケイコ『パンどろぼうとほっかほっカー』(KADOKAWA

 「パンどろぼう」シリーズの第5作目となる作品が第1位を受賞。パンに身を包んだ主人公・パンどろぼうの奮闘と成長をおもしろおかしく描いた第1作目の『パンどろぼう』でも過去に受賞しており、シリーズの根強い人気が伺えます。

 今回は、パンをもっと遠くへ届けようとキッチンカーを登場させたといいます。「シリーズものって回を追うごとに話がマンネリ化したり、展開が予測できてしまったりする作品が多いので、そうならないように考えるのが大変で、パンどろぼうと一緒に自分が成長していっています。実は無機質なものを描くのが苦手で、はじめて車に挑戦した作品でもありました。書店員さんがそういう苦労した部分もちゃんと見てくれたのかなと思うと感慨深いです」と柴田さん。これからも、人生にユーモアとワクワクがある大切さを届けていきたいと語ってくれました。

>えほん新定番:柴田ケイコさんの人気シリーズ「おいしそうなしろくま」インタビュー

第2位:ヨシタケシンスケ『メメンとモリ』(KADOKAWA)

 毎年のように「MOE絵本屋さん大賞」にランクインしているヨシタケシンスケさん。今年は初の長編絵本が第2位に選ばれました。「大事なものがなくなったらどうすればいい?」「人は何のために生きてるの?」といった疑問に、メメンとモリの姉弟が対話をしていく内容で、大人でも興味深いエピソードがたくさんあります。

ヨシタケシンスケさん

 「お子さんが読んでもきょとんとする内容だと思っていましたが、これを丁寧に読み込んでくださった書店員さんに感謝したいです。(この絵本は)45年生きている中で考えていた自分への問いでもあって、将来の自分のために作ったところもあります」とヨシタケさん。年齢を問わずに楽しめる作品に高評価が集まりました。

>『メメンとモリ』ヨシタケシンスケさんのインタビュー記事はこちら

第3位:柴田ケイコ『パンダのおさじと フライパンダ』(ポプラ社)

 第1位とのダブル受賞となった柴田ケイコさん。新しいシリーズにも注目が集まりました。「パンダのおさじを思いついたきっかけは、制作に悩んでいる時期に、小さな手のひらサイズのパンダが励ましてくれたらいいのにと思った妄想が始まりでした。あの悩んだ時期がこの賞につながったと思うと、無駄じゃなかったんだなと感じています」と、受賞の喜びを語りました。春には続編も出版予定だそうです!

>『パンダのおさじと フライパンダ』柴田ケイコさんのインタビュー記事はこちら

第4位:田中達也『おすしが ふくを かいにきた』(白泉社)

 ミニチュア写真家・見立て作家の田中達也さんの2冊目の絵本は、文房具などでつくられた街におすしがやってくるというシュールでおもしろい作品。2022年10月の発売から書店員さんに長く支持され、ランクインしました。

田中達也さん

 「擬人化の目をもって日常を見ると、イスが筋トレして踏ん張っている人に見えますし、どこに顔をつけるかで見えてくる姿も違います。そういう想像をはたらかせて楽しんでほしいです」と田中さん。2月2日には、本作よりもおすしが大活躍するという、シリーズ最新作『おすしが あるひ たびにでた』が発売されました。

>『くみたて』田中達也さんのインタビュー記事はこちら

第5位:キム・サングン/文・絵 すんみ/訳 『星をつるよる』(パイ・インターナショナル)

 韓国の絵本作家キム・サングンさんの、優しく包まれるような絵本が話題を呼びました。昨年父親になったというキムさんは、「これは私にとって特別な本です。この本を持ってプロポーズして、成功したからです!」と笑顔で挨拶。「私にとって一緒にいるだけで嬉しい、(絵本の)うさぎがあなたです」と奥様に伝えたのだそう。絵本に登場するうさぎは、眠れない夜に寄り添ってくれる、あたたかい存在。絵も非常に美しく、大切な人に贈りたい一冊となっています。

右からキム・サングンさん、翻訳を担当したすんみさん

第6位:たてのひろし/作 なかの真実/絵『ねこ と ことり』(世界文化社)

 洗練された絵と文章が目を引く本作。主人公の「ねこ」と「ことり」は、お互いを思いやり、歩み寄る存在として描かれています。お話を作った、たてのひろしさんは「ねこは人または私自身、小鳥は自然界を重ねていて、これが物語の軸になっています」と言います。そのやり取りから生まれる未来への希望を、なかの真実さんの美しい絵を通して描いた印象的な作品です。環境だけでなく人とのふれあいや大切なものとの向き合い方など、いろいろな人の心に響く絵本となっています。

>『ねこ と ことり』舘野鴻さん、なかの真実さんのインタビュー記事はこちら

第7位:ヨシタケシンスケ『ぼくはいったい どこにいるんだ』(ブロンズ新社)

 「ものごとを俯瞰してみることの便利さと大事さとおもしろさをわかってもらえるような本をつくりたい」と、ヨシタケシンスケさんが地図について考えた絵本です。ヨシタケさんらしいユーモアとアイデアが散りばめられています。

 「ちょうど絵本作家になってから10年が経ち、その間にいろんなことがあって、自分がどこにいるのか、どこにいきたかったのかを考えざるを得ないようなことがありました。そんなときに俯瞰できるような作品があったらいいだろう、何よりぼく自身が助かるだろうと思い、作りました」(ヨシタケさん)

第8位:たなかひかる『すしん』(ポプラ社)

たなかひかるさん

 第8位には、お笑い芸人で漫画家のたなかひかるさんの絵本が選ばれました。「無意味を追求したものなのですが、なにかしらを感じていただいた書店員に感謝します」と、たなかさん。擬音語のような「すし語」を操りながらすしが疾走する姿に、思わず笑ってしまいます。「引き続き、無意味なものを作っていきたいです!」とのコメントに、今後の作品への期待感が高まりました。

>えほん新定番:『おばけのかわをむいたら』たなかひかるさんのインタビュー記事はこちら

第9位:しおたにまみこ『いちじくのはなし』(ブロンズ新社)

 日本絵本賞大賞など数々の賞を受賞した『たまごのはなし』のシリーズ第2弾です。「はじめてのシリーズでしたので、いままでと違った不安があったんですが、書店員のみなさんに選んでいただき嬉しかったです。制作の糧になります」と話すしおたにさん。世界観が独特でおもしろく、ほらふきなのに憎めないいちじくの物語にどんどん引き込まれます。絵本の中でも読み物に近く、想像力が膨らむ幼年文学へのステップアップブックとしてもおすすめの一冊です。

>えほん新定番:『たまごのはなし』しおたにまみこさんのインタビュー記事はこちら

第10位:キューライス『ニンジンジン』(白泉社)

キューライスさん

 漫画家や短編アニメーション作家としても活躍するキューライスさんは、絵本でもそのユーモアセンスをさく裂させています。本作も足のはえたニンジンがありえない行動でうさぎの攻撃をかわしていくというお話。「ニンジン嫌いの子どもがニンジン好きになった……という手紙が届くことを期待しています!」と、コメントでも笑いを誘いました。

>『ドン・ウッサ ダイエットだいさくせん!』キューライスさんのインタビュー記事はこちら

ファーストブック賞、新人賞第1位はjunoさんの刺繍絵本

 前回から新設された「ファーストブック賞」は、0・1・2歳の子どもたちへのおすすめ絵本をピックアップして書店員さんが選んだものです。

 「ファーストブック賞」「新人賞」ともに、第1位には刺繍作家・juno(ユノ)さんの『やぎさんのさんぽ』(福音館書店)が選ばれました。ふわふわのヤギや花など、刺繍のやわらかい風合いが感じられる刺繍絵本です。「ラフを細かく描いていって、ここはヤギさんがピョンと跳ねているところにしようなど、考えながら作りました。本が大好きなので、絵本作りにはまた挑戦してみたいです」と、junoさんは言います

juno(ユノ)さん

 そのほかの「ファーストブック賞」には、『はんぶんこ』(作:杜今日子、福音館書店)、『こちょこちょ あはは』(作:ひらぎみつえ、ほるぷ出版)、『ぷっくりぽっこり』(作:中村至男、偕成社)、『ぱんですよ』(作:大森裕子、白泉社)が選ばれています。

 「新人賞」第2位には、絵本大賞第6位の『ねこ と ことり』がランクイン。ほかには、『ぎょうざが いなくなり さがしています』(作:玉田美知子、講談社)、『ももからうまれたおにたろう』(作:リリー(見取り図)、サンマーク出版)と、笑いの中にもホロッとできる作品や、かわいい絵や色づかいが特徴の『ベニーのみずたまぼうし』(作:しおみつさちか、白泉社)が選ばれました。

 全国3000店舗以上の書店で、受賞作品を集めた「MOE絵本屋さん大賞フェア」が開催されています。ぜひこの機会に、気になった絵本を手に取ってみてください。