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「伝説の出版社 博文館」書評 出版界に起こした疾風を一望

評者: 御厨貴 / 朝⽇新聞掲載:2026年05月30日
伝説の出版社 博文館 (筑摩選書 0326) 著者:堀 啓子 出版社:筑摩書房 ジャンル:本・図書館

ISBN: 9784480018458
発売⽇: 2026/03/18
サイズ: 18.8×2.4cm/320p

「伝説の出版社 博文館」 [著]堀啓子

 博文館を解き明かす本が出た。まるで百科全書のように詳しい。新潟県の長岡出身で、とにかく疾風を至るところに巻き起こす創業者の大橋佐平。維新の時代には、こういう起業家が生まれる。いまの社会でも十分に参考になる人材だ。
 『日本大家論集』『日清戦争実記』『少年世界』『文藝倶楽部』、そして名高い『新青年』と、次から次へと雑誌を編集、出版する。三号雑誌もいとわず、どんどん目先を変え編集を個性的にし、対象もまた子どもから大人まで、文芸好きからあれこれの好みに合わせて、出すわ出すわ。しかも写真や絵や文字以外のメディアの道具を駆使する。博文館の「日記帳」も記憶に残る。
 なかでも総合情報雑誌『太陽』は、一家に一冊的な家族が知っておくべき智恵(ちえ)をこれでもかと詰め込んですごい。四半世紀前に『太陽』を使って本を書いた身としては、ああこの本があのころにあれば、博文館にもっと迫れたなと思う。でもこれだけの威容を誇る博文館がどうして一部を残して戦後は消え去ったのか。そこはまだ謎解きの余地がありやなしや。