うん? どろぼう? わるいやつのお話?
いえいえ、そうではありません。こころに優しい暖かい灯がほんのりともるような、そんな絵童話です。
どろぼうの名前はジャンボリ。うんとても良い名前。そのジャンボリさんが盗むのが、いや、さん付けはやめよう。ジャンボリと呼ぼう。
ジャンボリが盗むのがてがみです。いや実はどろぼうだけど盗むんではなくて集めて回っているのです。
夜な夜な街の人たちが寝静まったあとみんなが書いて出さなかった、はずかしくなって出せなかった。そんなてがみのたねを。
てがみのたねっていうことばがすてきですね。
そう、この絵童話にはそんなすてきな詩の言葉があちこちにポイッと投げかけるようにちりばめられています。
人々が出すことができなかったゴミ箱の中のてがみ。そこにはそれを書いた人々のほんとうのこころがあるのではないでしょうか。そこには素直なキラキラしたこころがかくれていることでしょう。
だから毎夜毎夜ジャンボリはてがみのたねのはだかんぼうのことばをあつめて回るのです。はだかんぼうのことば、このことばはこの絵童話のなかのことばですよ。読みたくなってきましたでしょ。
この絵童話は「ジャンボリがぬすむもの」「きえたてがみ」「まちのみんなにおきたこと」の3章で書かれています。きえた? 何がおきたの? とんでもないことがおきるのですよ。えらいことえらいことどうしましょう。
あーそれから言っときますけど絵がいいですね。こころの中に光を当てるような絵。きっとこの絵童話を読んで見終わった後には、大人も子どももみんなてがみが書きたくなることでしょう。=朝日新聞2026年6月20日掲載
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ほるぷ出版・1540円。25年4月刊、10刷5万部。作者は86年生まれ。20年絵本作家デビュー。担当編集者は「絵本を卒業した子どもが『初めて1人で読めた』と自信を得て、読み物への橋渡しを担う作品になるよう心がけた」と話す。