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「本屋の未来形」を考える4店 出版不況・コロナ禍を、しなやかにしたたかに生き抜く

イベント本屋の先駆けは今:下北沢「B&B」

人文書の棚で本を手にする内沼晋太郎さん

 2012年から「ビールが飲める本屋」として数多くのトークライブをしかけてきた下北沢の「B&B」。店主の内沼晋太郎さんは、個人の本屋開業のノウハウを詰め込んだ『これからの本屋読本』(NHK出版)を無料で全文公開し、本屋開業志望者のバイブルとして定評があります。

 2020年4月に現在の再開発スペースに移転しましたが、直後に新型コロナでリアルイベントが壊滅状態に。有料オンラインイベントに舵を切り、これまでなかった地方からの反響も増えたとか。「お客さんをいくらでも入れられるというのがやはり大きい。300人とか500人入るイベントもできているので。イベントのアーカイブ動画を販売すること、月額のサブスクリプションみたいなこともできないかと、いま検討をすすめています」

 2度の移転と新型コロナ 内沼晋太郎さんと考える街の本屋の未来:本屋B&B(じんぶん堂)

ジャンル分けしない棚作り:荻窪「Title」

Title店内で、店主の辻山良雄さん

 JR荻窪駅から青梅街道を西へ10分。2021年1月に開業5年を迎えた「Title」は、本好きや作家、クリエイターにも親しまれる人気店。開業当初から1万冊が並ぶ店内は人文書、漫画、地図から実用書、絵本さらにはZineまで多彩。大型書店リブロから独立した店主の辻山良雄さんならではの、ジャンル分けしない棚作りが光ります。

 人気作家のトークショーなどイベントも積極的にしかけてきましたが、こちらはコロナでお休み中。それでも「去年ほど、本を売った手ごたえがある年はなかった。色んなところから本の注文が来たり、本棚を見ている人が『落ち着きました』とか『本っていいですよね』と言ってくださったりしましたね。そういう本を人に手渡していくのが本屋の仕事だと思うんです」

 「本屋、はじめました」から5年 全国の本好きとつながる街の新刊書店ができるまで:Title(じんぶん堂)

本屋が本を作る:表参道「青山ブックセンター本店」

青山ブックセンター本店(ABC)店長の山下優さん

 渋谷駅と表参道駅のほぼ中間地点、洋雑誌やデザイン、写真集の品揃えで知られる青山ブックセンター本店。2018年に店長に就任した山下優さんは1986年生まれ。出版業界の古き良き時代を知らない世代として、いろんな「改革」に取り組んでいます。

 ロゴの一新、オリジナルグッズの発売に加え、2020年2月には同店だけで販売する発酵デザイナー小倉ヒラクさんの写真集『発酵する日本』を刊行。「本はどこでも同じ値段で買えます。そのなかで、お店にしかないものは魅力的。自分たちが作った本が、お店に来た人に届いていくのは、本当に原点。書店だからできることでもあります」

 本を売るだけの時代は終わった。本づくりに挑む書店、出版不況への反撃:青山ブックセンター本店(じんぶん堂)

校閲から本棚まで:神楽坂「かもめブックス」

「かもめブックス」の栁下恭平さん。

 2014年11月にオープンした「かもめブックス」。約41坪の店内は「手前はデイリーユースで、奥に行くほどマニアック」な品揃えを自負しているとか。「うちは大手に比べたら小さく、棚も少ないので、今まで知らなかった本との出会いができるような店にしていきたくて」と店長の栁下(やなした)恭平さん。

 栁下さんは近くで校閲会社「鷗来堂」も営んでいるほか「ハミングバード・ブックシェルフ」という本棚ブランドも手掛けています。「読書を通して知識を血肉にする習慣について考えたくて、地元の神楽坂で書店をやろうと思ったんです。すべての世帯に本を売りたくて、まずは本棚を売ろうかと」

 かもめブックス(東京) すべての世帯に読書という習慣を。本棚から売る「渡り鳥」の夢(好書好日)