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【逸冊レビュー7月号/夏の本】無気力とは、生を渇望するということ

「夏の闇」 開高健・著 あらすじ

 誰も殺せず、誰も救えず、徒労と焦燥の間を漂うしかなかったヴェトナムでの戦場体験を経て、暗く、抜け道のない「現代」によどむ懈怠と嫌悪の淵に沈潜し、ひたすら女との甘い生活にふけろうとする男。男は「私」であり、作家は自分自身に挑みかかる決意だった。40歳のにがい記念として…。かくて、書き直しも消し跡もほとんどない、この完璧な原稿が残された。作家の決意がみごとなまでに結実した、その記念として—。(「honto」より引用)

投稿者・シズさん(千葉県)

 濃密な無気力は生への渇望と背中合わせなのである。ひたすら「肉」をむさぼる日々とベトナムという肉はおろか精神までむさぼってしまう現実へ戻っていく主人公。きれいな声で呼びかける「へいわ」なんてものは吹っ飛んでしまうような、人間の狂おしい姿がここにある。

谷原店長のコメント

 開高さんの食や釣りのエッセイ大好きです。小説も読んでみたい。