1. HOME
  2. コラム
  3. 選書往還
  4. リリックの源泉ここにあり! ラッパーたちが影響を受けた海外文学

リリックの源泉ここにあり! ラッパーたちが影響を受けた海外文学

 「好書好日」の人気企画「ラッパーたちの読書メソッド」は、人気ラッパーたちのリリック(歌詞)がいかにして生まれるのかを、自身の創作と関わりの深い本をあげながら語ってもらうインタビューです。小説やマンガだけでなく、ビジネス書に写真集、洋書とあらゆる本が飛び出す連載のなかから、海外文学にしぼって紹介します。

  1. 「イリュージョン」(リチャード・バック、集英社文庫)
  2. 「ムーン・パレス」(ポール・オースター、新潮文庫)
  3. 「伝奇集」(ホルヘ・ルイス・ボルヘス、岩波文庫)
  4. 「救い出される」(ジェイムズ・ディッキー、新潮文庫)
  5. 「存在と無」(ジャン=ポール・サルトル、ちくま学芸文庫)

(1)「イリュージョン」
 「かもめのジョナサン」でおなじみの著者によるファンタジー小説。主人公の遊覧船パイロットが、憧れていた元救世主の同業者と一緒に旅をする物語です。ラッパー・仙人掌さんが下北沢の漫画喫茶で働いた20歳くらいの時、自分の信じる道を進もうと決意した一冊。新しいことを始める時に読むと自由な発想になれるからと、自身も何度も読み、多くの人に貸し、贈ったそうです。

>【ラッパーたちの読書メソッド】仙人掌さんの回はこちら

(2)「ムーン・パレス」
 アメリカを代表する作家オースターの青春小説です。コロンビア大の学生があることをきっかけに自分のアイデンティティを探す物語。新聞社の校閲バイトをしていたころに読んだラッパー・ZEN-LA-ROCKさんは物語の魅力もさることながら、柴田元幸さんの翻訳に衝撃を受けました。日常のなにげない瞬間をロマンチックに表現した文章は、他のオースター作品の訳と比べても「合致具合は神がかってる」そうです。

>【ラッパーたちの読書メソッド】ZEN-LA-ROCKさんの回はこちら

(3)「伝奇集」
 ボルヘスの代名詞とも言える「バベルの図書館」を収めた短編集です。幻想的な思弁小説が並びますが、ラッパー・Lil Mercyさんは「バベルの図書館」について、テーマは難解であるものの、古臭いSFのような映像が浮かぶ文章で、自分の中にすっと入ってきたと言います。世界や人生を図書館で表現するのがすごく面白く、そうした発想を自らの制作に生かしています。

>【ラッパーたちの読書メソッド】Lil Mercyさんの回はこちら

(4)「救い出される」
 山梨で音楽制作と釣りにいそしむラッパー・田我流さんが、「ぶっ飛んだ」と絶賛する小説です。50年ほど前のアメリカ南部、40代のサラリーマン4人が山にラフティングに行きます。最初のうちは、仕事と家庭で板挟みになった男たちが自然の中で人生の大切なものを見つけるかような静かな展開ですが、途中から急流にのみこまれるような怒濤の展開が待っています。

>【ラッパーたちの読書メソッド】田我流さんの回はこちら

(5)「存在と無」
 サルトルによる20世紀を代表する哲学的著作です。ラッパーのkamuiさんが「音楽で人生を変えたい」と思っていたときに手にとった本。実存主義の根本を「世の中にあるすべての意味を一旦無くして、その何もない状態からまずは始めようや」と読み取り、ストリートの思想を感じます。音楽で何をするべきか、勇気をもらった本だそうです。

>【ラッパーたちの読書メソッド】kamuiさんの回はこちら