絵本ナビ編集長おすすめの新刊絵本11冊は…? 「NEXTプラチナブック」(2026年5月選定)
【この記事で紹介する絵本】
さあ、まにちゃんの1週間がはじまります。まにちゃんには、とにかくやりたいことがたっくさん。月曜日は、すずめと並んでうたう歌手。火曜日は、きりんさんより高いところから見下ろす消防士、水曜日は水泳選手、木曜日はひつじ飼い。けれど、街の人たちはまにちゃんに「どれが いちばん だいじなの?」と聞くのです。まにちゃんは困ってしまい……。
【編集長のおすすめポイント】
「やりたいこと」があるって、とても素敵なこと。まわりの人だって、みんなきっと応援してくれるはず。だけどそれがいくつもいくつもあった時、今度は「うまくいくはずがない」って心配されるようになる。本当に「やりたい」ことや「楽しい」ことが一つだって誰が決めたのでしょう? 絵本に登場するまにちゃんのパワーを感じながら、確かに思い込んでいたのは自分自身だったのかもしれないと気づくのです。諦めそうになったり、迷ったりした時には、まにちゃんに会いにくるのがおすすめです。
ゴリラからの挑戦状。これから何を聞かれても「ゴリラのはなくそ」って言わなければならない、という約束をさせられます。「朝ごはん、なに食べた?」「大きくなったら、何になる?」など、質問の内容は簡単なものから、意味深そうなものまでふり幅たっぷり。でも、どんなに考えたって、どんなに照れたって答えはひとつなのです。それはもちろん?
【編集長のおすすめポイント】
ゴリラの問いかけに「はなくそー!」と無邪気にさけぶ子、ちょっと嫌がりながらも少しずつ声が明るくなってくる子、答えている子を見て笑ってしまう子、どこまでも冷静な子、照れてしまう子。そして、そんな様子を見ながら嬉しそうに本を読む大人、兄弟、友だち……。設定こそ決められているものの、そこに生まれてくる反応や空気はきっとさまざま。思いきって声を出したら、心が解放されて自由な気持ちになった! そんな体験をしてもらえたら、絵本としても本望ですよね。
今日は楽しい遠足の日。ちいたくんは元気に出かけていきます。でも……おべんとうわすれてる! なんてこと!! ままは慌てておべんとうを持って家を飛び出しますが、電車は出発。ままは走りながら叫びます。
「ちいた! おべんとう わすれてるよ~~」
けれど、ちいたはちっとも気が付きません。ままは自転車をかりて、さらにトラックに乗せてもらって、必死に追いかけますが、とうとう……。
【編集長のおすすめポイント】
「子どもがおべんとうを忘れていった……」全てはここから始まります。まさに絶望。とても他人事とは思えなくて、ハラハラしてしまった方も多いのではないでしょうか。けれど振り返ってみれば、この究極のピンチこそ、子育ての大きな喜びでもあったりするのです。終わってみれば、この偉大なままの冒険物語だって「子育て日常あるある」の一つだったりして。そんな姿に胸をうたれつつ、やっぱり笑いとばしてしまうのが正解なのでしょう!
4年3組、隣の席のかわのさん。青いセーターが似合って、鉛筆のきれいなかわのさん。だんごむしが大好きで、かけっこが得意で、授業中はいつも手をあげるかわのさん。ぼくがいつも気にしていた、かわのさん。そのかわのさんが、南の町へ引っ越していくことになった。そのとたん涙があふれ、ぼくの心がつぶやいていた。……かおりちゃん。少年の心の中で鮮明に残り続ける「初恋の景色」が描かれます。
【編集長のおすすめポイント】
頭の中は気になるあの子でいっぱいになっているくせに、それが恋心だということにさえ気づいていない。本当は仲良しだったのに、わざと距離を置いてみたりして。遠くに行ってしまうなら、もっと早く声をかければ良かった。不器用だけどまっすぐで……。初恋というのは、こういう失敗や後悔の積み重ね。子どもにとってはまだまだ苦みの残る出来事かもしれないし、大人にとっては心の片隅に微かに残る記憶の一つなのでしょう。だからこそ、こんな風に爽やかな一冊の絵本にしてくれたことを、とても嬉しく感じるのです。
大好きなおとうさんと、はじめてのドライブ。コットが質問をすれば、おとうさんはすぐに答えてくれます。コットみたいなお天気の話、暗いトンネルが怖くなくなる方法、白鳥の旅や四季の話。やがておひさまが沈むと、夜がやってきて、また新しい一日がはじまるのだとおとうさんは教えてくれます。すっかり違う世界みたいになった夜の景色の中で、コットはふと思うのです。ずっとかわらないことって、あるのかなーー。注目の絵本作家・阿部結さんが、過ぎていく時間や移ろいゆく世界の中で変わらずに存在し続けるものを描きます。
【編集長のおすすめポイント】
今が永遠に続くと思っていた子ども時代の自分にとって、一日の終わりがくること、目に見える景色がどんどん移り変わっていくこと、自分もまわりも変化し続けていくという現実に、受け入れ難いような気持ちにもなっていたことを思い出します。もし、その時の自分に「ずっと かわらないことって あるのかな」と聞かれたら、今の自分はなんて答えるのだろう……。本を読み返すたびに、答えを探してみたくなる一冊です。
休み時間。ぼくらは、ドッジボールのボールをめぐって言い争いをしていた。どちらのチームも主張をゆずらない。「ヒロシのうそつき。おおうそつき」そう言われた瞬間、ぼくの体があつくなった。「なんだと! タクヤなんか しんじゃえ!」一瞬、静まり返る教室。けれど、すぐにタクヤが「しんじゃえ!」と言い返し、そのまま教室中に「しんじゃえ」の言葉が飛びかった。(先生のカミナリが落ちる)そう思って先生の顔を見ると……。「言葉の重み」と「いのちの大切さ」について考える絵本。
【編集長のおすすめポイント】
言葉には、発した本人が意図した以上に相手を傷つけてしまうという、危うい側面があります。そして、その事実に気が付かないことさえあります。だからこそ、この絵本の中ですぎた先生の涙の意味を丁寧に紐解いていくことが重要なのです。誰かを傷つけるということは、まわりまわって自分を大切にしてくれている人たちや、大好きな人を傷つけることにもつながっていくのです。大人も子どもも一緒に考えていきたい課題です。
クマせんせいのクラスでは、みんなですうじの1をかいてみることに。小さなカニは、筆を持つと、横へ横へ横へ。歩きながら「ー」とかきます。アリは、みんなが見つけられないほど、ちっちゃなちっちゃな1を。ひよこは、ダンスしているみたいな1を。それから、ゆっくりゆーーっくり1をかいているのはカメ。へびやことり、こいぬ、こぶたも……。それぞれが一生懸命に書いた「1」は、どれも本当に素敵!! クマせんせいの言葉に後押しされながら、みんな胸をはって見せあうのです。
【編集長のおすすめポイント】
同じ「1」をかいているはずなのに、こんなにも違った「1」が生まれてくるなんて! 読者の方が驚かされてしまいます。ひとりひとりが自分なりの「1」、自分が得意な「1」をじっくりゆっくり考え、奮闘した結果なのでしょうね。大事なのはその過程なのだということが、みんなの誇らしげな表情からしっかりと伝わってきます。可愛いけれど、大人の役にも立ちそうな絵本です。
地面の上にちょこんと置かれているのは、赤くて丸いさくらんぼ。さくらんぼはどこにあるのかな? 草の上かな? と思ったら、緑の鳥の背中の上。
今度は、ディエゴおじさんの頭の上。 バナナの上? 湖の中? 山の上? それとも……ううん、どれもちがうみたい。でも、想像したところよりもずっと素敵なところ! 「さくらんぼ どこにある?」とくり返し展開していく、ひと目見たら忘れられない可愛い絵本。
【編集長のおすすめポイント】
どこまでも広がる濃い緑の上にあるさくらんぼ、愛嬌のある顔の上に乗っているさくらんぼ、わんちゃんの鼻先やソーダ水の中に浮かぶさくらんぼ。さくらんぼの色とフォルムにキュンとしてしまう人にとって、そのどれもが「そこにあって欲しい場所」のさくらんぼなのです。読む人の感覚や気持ちをダイレクトに喜ばせてくれる、アートと絵本の面白さがぎゅっと詰まった一冊。ページをめくるたびに弾けるワクワク感を、小さな子どもたちにこそ味わってほしいと思うのです。
ポーは夢を見ます。ウサギを追いかける夢。前は本当に追いかけていたけれど、いまは夢を見ているだけ。部屋でエドワードが本を読む時間は嬉しい。だって、散歩に行かなくていいから。だけどエドワードが行きたい時には、ついていってゆっくり歩きます。もうじゅうぶん走ったからね。ポーは、ずっとねむります。ねむって、夢を見ます……。大切な「家族」とお別れしたことのあるすべての人へ贈る、ノルウェー発の絵本。翻訳を手がけられたのは『犬がいるから』(筑摩書房)などのエッセイでも知られる村井理子さん。
【編集長のおすすめポイント】
少しずつ夢を見ることが多くなり、さんぽするのも疲れるようになり、まわりも静かになっていく。最期を迎えようとしているポーができることは少なくなっていくけれど、エドワードは変わらずそばにいて、ポーはとても幸せそう。「最後にどんな夢を見ていたのかな」。この絵本を読んでいると、「老い」や「死」がとても自然なことのようにも感じるのです。残された側の心を癒してくれる、大切な一冊になってくれそうです。
キャンプに出かけ、夜空を見上げながら月に問いかけ、海の上でひかる波を数え、野原で風に揺れる花の気持ちになってみる。その輝きや明るさ、にぎやかさの中に「わたし」を見つける少女。それからもみの木や雨つぶ、カミナリの音を聞きながら、強さと優しさときらめきを。さらに、どこまでも流れる川のような勇敢さも。「わたし」の中には誰も知らない不思議がある。大きく育つ未来のための種がある。だからわたしは……。
【編集長のおすすめポイント】
この広い世界の中にいるちっぽけな「わたし」。まだ、わたしは何もできていないかもしれない。だけど、ここにある自然はわたしのことがまるごと全部好きで、わたしの中には自分でもまだ気づいていない不思議がある。これからわたしは何にでもなれるんだ。なりたいものになれるんだ。弱いと思っていた自分を、こんなにも力づけてくれる言葉はあるだろうか。「わたしも せかいを うつくしく したいな」と、声に出して言ってみるのです。
山へ行った時。川へ行った時。海へ行った時。ごつごつ、ごろごろ、つるつる……数ある小石の中から、思わず手をのばして拾ったことがあるならば。思い出してみて! その小石はどのくらいの大きさで、どんな触感で、どんな色をしていた? 「こいしは ちきゅうの ひとかけら」。46億年をかけて、少しずつ少しずつ小さくなっていった小石。手にしたとたん、きっと様々な想像の世界が広がっていくはず。
【編集長のおすすめポイント】
いつか集めた小石を手にして、幼かった頃の自分はそこに何を見ていたのだろう。手の平に乗せてちょうどいい大きさ、好きな触感、好きな色。そして、自分だけの物語。言葉にはできなかったとしても、きっと理由があったはず。そして同じように息子が小石を自分の箱にしまい込む。思ったよりもごつくてぶっきらぼうだけど、きっと息子にとっては特別な友だち。詳しく聞いてみたい気もするけれど、それはまたいつか。
絵本ナビ編集長がおすすめする「NEXTプラチナブック11選」はいかがでしたでしょうか。対象年齢も、あつかっているテーマもさまざま。気になった絵本があったら、ぜひ手にとってみてくださいね。絵本ナビ「プラチナブック」連載ページへ