ISBN: 4863136412
発売⽇: 2026/6/18
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「驚異の隠し部屋」 [著]S・バックマン、A・G・トゥーホルキー
『驚異の隠し部屋』。この意味深な題名は、僕を秘密の迷宮や秘匿性たっぷりの禁断の空洞にほうり込むのに十分な魔力の通路――なんて夢想しながらふと、『不思議の国のアリス』を思い浮かべたら、なんと本書にもアリスの例えが出ていました。
アリスが兎(うさぎ)を追って穴の底に落ちてたどり着いた所にひとつの扉があって、その先をのぞき込むと、なんと素敵な庭がある――とそこまで想像した時、僕の頭の中に浮かんだのはアリスの秘密の庭ではなく、マルセル・デュシャンの死後に公開された「死後の芸術」、つまり通称「遺作」と呼ばれる作品です。頑丈な木の扉で封印され、扉の目の高さのところに小さい二つの穴があって、その穴を覗(のぞ)くと扉の内部は「驚異の隠し部屋」になっており、そこは死後の世界への想像を巡らせられる仕掛けになっているのです。
盛られた枝の上に顔を毛髪でおおわれた全裸の女性の遺体(?)が股を開いて性器もあらわに、硬直したその手にはガスランプが握られて、後方の樹木におおわれた山並みにある滝では、テクナメーションという電気仕掛けの水が湖へとめどなく落下している。そんな隠された禁断の秘密の光景に没頭しながら、僕は想像の世界に落下してしまうのでした。
話がつい迷宮化してしまいましたが、本書が伝えたい秘密の場所は、まさに冥界への入り口で、ドアの向こうには延々と宴(うたげ)が続く死後の世界が存在すると思えるのです。
ここで僕が体験した現実の異界建築「ウィンチェスター・ミステリー・ハウス」を紹介しましょう。この建物は永遠に建て続けなければならず、もし中断すると霊の呪いによって死ぬと言われた、何とも恐ろしい建物なのです。だから常に未完のまま建て続けられていたのです。
なぜ驚異か、それはそこが常に未完だからです。
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Stefan Bachmann 米国生まれの作家▽April Genevieve Tucholke 米国在住の作家。本書では大英博物館も紹介。
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片山美佳子訳