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「かたちと進化の謎」書評 多様なロジック重ね事実に迫る

評者: 田島木綿子 / 朝⽇新聞掲載:2026年07月25日
かたちと進化の謎 生物の進化を「数理の目」でよみとく (ブルーバックス B 2333) 著者:生形 貴男 出版社:講談社 ジャンル:

ISBN: 4065441935
発売⽇: 2026/6/18
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「かたちと進化の謎」 [著]生形貴男

 古生物学というと、恐竜やマンモスのように太古のロマンあふれる印象が先行するが、実は、ドライでデジタルなアプローチの重要性や、化石記録の読み解きを専門とするデータサイエンスが主軸であることが述べられている。
 専門用語や物理や統計といった考え方が多く登場し、それらが本書の主役であるいきものの「かたち」から生命の進化や適応を読み解くヒントになるとわかる。本書でも述べられているように、博物館に展示される標本のような「ウェットなロマン」(私はこちら側に籍を置く専門家)とは対極に位置する切り口である。
 古生物学の対象は基本的にすでに絶滅したいきものであるため、知りたい、得たい情報量が圧倒的に限られる。貝殻、骨、歯など数千万年、数百万年というとてつもない時間を経て残るものの「かたち」から、いきものの進化や系統を読み解く人間のたゆみない探究心や客観性を知り、好きなだけでは追いつけない、答えを導き出す長い道のりと難しさも味わえる。
 かたちの変化の説明にはホタテガイも登場する。成長に伴う閉殻筋(我々が食する貝柱はこの部分)と殻の表面積の関係などを知ると、たかがホタテガイ、されどホタテガイで、環境に適応して生き残っていることがわかる。私が専門とするクジラ類も、見た目は魚のようなのに哺乳類で、系統的に離れた種が似たかたちになる「収斂(しゅうれん)進化」の例として紹介され、これも、かたちと進化の謎を考えるきっかけにつながる。
 生命進化史や古生物学が好きな方なら一度は耳にしたことのある「カンブリア爆発」。現在見られる動物門が古生代のカンブリア紀に一斉に出そろったように見えることだが、かたちの多様性に関する研究者たちの議論は本書の見どころ。科学は多様なロジックの積み重ねにより真の事実に到達することを改めて実感できよう。
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うぶかた・たかお 1967年生まれ。京都大教授(古生物学)。共著書に『古生物の科学2 古生物の形態と解析』。