- 『佐渡絢爛(けんらん)』 赤神諒著 徳間文庫 1078円
- 『虎と十字架 南部藩虎騒動』 平谷美樹(ひらやよしき)著 実業之日本社文庫 1210円
- 『隆家(りゅうけ)北方食目録 美味なる禁忌と共犯の始まり』 みつきあこ著 角川文庫 1012円
◇
ジャンル横断ものから、近年盛りあがりをみせる歴史×ミステリーをテーマに選書。(1)は元禄時代の佐渡金山、大癋見(おおべしみ)の能面をつけた犯人による連続殺人事件が起きる。コンビを組む「グウタラ侍」の中年と、真面目で先進的な振矩師(ふりがねし)(鉱山測量技師)の青年は、さしずめ叩(たた)きあげ刑事(デカ)と新人刑事。まさにゴールデンコンビの彼らは、採掘と錬金にまつわる巨大な陰謀を感知する。特殊な用語も多い金採掘の世界を王道ミステリーにゆだね、スムーズに描写する作者の手腕が見事だ。
寛永年間の南部藩盛岡城で、罪人の死体を食(は)む虎二頭が逃げ出す衝撃的なシーンではじまる(2)は、徒目付(かちめつけ)の平四郎が陰謀の犯人を捜す探偵小説仕立て。実は史実でも徳川家康から南部藩に虎二頭が贈られており、さらに戦国時代の残滓(ざんし)たる東北のある事情を盛り込んで、外連味(けれんみ)がある。終盤、謎解きシーンの犯人の告白には「そうくるか」と評者もにんまりした。
中華風異世界が舞台の(3)。禁字、禁書令や社会制度は唐王朝を意識しており、文化考証も巧み。異教徒の北方料理に魅了された豪商の家の御曹司は、禁書の食目録(レシピ)を再現するため北方民族の血を引く料理人の少年に玉陽と名を与え“共犯”に仕立てる。二人のかけあいが楽しく、羊の串焼き、アップルパイを思わせる林檎糕(りんごこう)、評者も大好きな中国北部料理の温度感の描写は、力が入っている。とりわけクライマックスの羊の蒸し焼きを食すシーンが感動的だ。政治によって文字や食など文化が排斥される不条理は現代にも通じる。=朝日新聞2026年9月12日掲載