ISBN: 9784794228468
発売⽇: 2026/04/27
サイズ: 13.5×18.8cm/416p
「AI過大評価社会」 [著]アルヴィンド・ナラヤナン、サヤシュ・カプール
ここ二年ほどのことだろうか。暮らしにすっかりAIが入り込んだ。文章を書くことを生業としているから、そこはAIに頼らない。だが基礎的なデータや情報をAIで事前確認し、見当をつけて、実際の統計や文献にあたるようになった。作業は確かに効率化した。
ただ、この快適さは薄気味悪さと背中あわせでもある。なぜなら、AIという「道具」への依存は強まる一方なのに、本質的な疑問は置き去りにされたままだからだ。
生成AIは意味のある情報を瞬時に作るが、学習のために収集されたデータの著作権はいったいどうなっているのか。AIを駆使するハッカーが政府のシステムを乗っ取る危険はないのか。予測AIが進化すれば人間の仕事は失われないか。いやそれどころか、進化したAIは、人間すらも支配するのではないか。
本書はこうした疑問に明快な答えを与える一冊だ。著者は世界的なAI研究者。誠実な書きぶりで文章は平明、具体例に富み、読みやすい。
分野で差はあるもののAIは今後もさらなる進化を遂げるという。だが重要なのは技術的な行く末ではない。人間がこれとどう向き合い、どう社会に位置づけるかという選択の問題である。
効率化やコスト減に血道をあげる人びとを、科学的根拠に乏しいAI商品が待ち受ける。万能薬をうたうインチキは、ときに人の命さえ平然と奪う。AIの開発過程では従事者が道具化し、労働者搾取が横行している。
政府は規制を強化しようとする。ところが、一部のAI企業は、その規制さえ都合よく利用し、ごく限られた企業しか参入できない市場障壁を築こうと画策する。まるでやりたい放題だ。
AIに自らの未来を決める力はない。その行方を決めるのは、技術を使う私たちのモラルと良識だ。人間の希望は、結局人間にしか託せない。AIを知り尽くした二人の著者は、そう静かに、力強く語りかける。
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Arvind Narayanan プリンストン大教授、同大情報技術政策センター所長▽Sayash Kapoor 同大博士課程大学院生。
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的場知之訳