西荻窪「本屋ロカンタン」
JR西荻窪駅南口の、商店や住宅が立ち並ぶ一角にある店は、なんと店主・萩野亮さんの自宅マンションの一室でもあります。「閉店後は平台を移動させたスペースに、布団を敷いて寝てます。生活感がない部屋ですねと言われますが、生活らしい生活が私にはありませんから」
紆余曲折の末、本屋を開くに至った萩野さん。「わたしが実践しているのは、『私的所有の放棄』です。マイホームもマイカーも要らない。雨風がしのげて、眠れる場所があればいい。こたつがあればなおいい。自宅を本屋として社会に開く。蔵書を手放して、代わりに新刊を商う。そうして日々、お客さんを迎える。それだけでいいんです」
本屋ロカンタン(東京) 自宅の一室が本屋。38歳店主の、山あり谷あり人生に本あり(好書好日)
早稲田「NENOi」
早稲田通り沿いにあるガラス張りの店で、店主の根井啓さんが出迎える店。会社勤めを経てオーストラリアに渡った根井さんは、世界的にも有名なメルボルンのビクトリア州立図書館で、訪れた人々が交流を深めていく様子に感銘を受けたと言います。
書棚に新館と古書が入り交じって並ぶ店内では、カウンターに座ってドリンクを飲むことも可能。「本を介して、人と人とがつながる場所。自分も、そんな場所を作りたい」という夢を膨らませています。
NENOi(東京) メルボルンでひらめいた店主が早稲田で夢見る、人と人をつなぐ本の場作り(好書好日)
田原町「Readin'Writin' BOOKSTORE」
東京・浅草の西に位置する田原町。大通りを一歩入ったところにあるリーディンライティンは、梁のある高い天井の開放的な空間。コーヒーやドリンクを飲みながら、中二階の畳スペースでくつろぐこともできます。
店主の落合博さんは新聞記者から58歳で転身しました。主にスポーツ取材が長かったと言いますが、注目はジェンダーやフェミニズム関連の書籍が充実していること。「スポーツは女性がすごく抑圧的な状況にあることはわかっていました。今まさに関心がある。僕の興味に答えてくれる本がたくさん出ているので、さらに増えてきているところです」
55歳で父になり、本屋をやろうと決めた。「僕が読みたい」フェミニズムの本が増えた:リーディンライティン(じんぶん堂)
幕張「本屋lighthouse」
千葉市の住宅街の一角で、店主の関口竜平さんが自ら組み立てた建物で営業していた本屋lighthouse。その個性的な店構えが地元では強烈な存在感を放つ、知る人ぞ知る店でしたが、2021年1月、JRと京成の幕張駅近くにあるテナントに入居し、本格的な店舗を構えました。
1992年生まれの関口さんが大学院修了後、別の書店などでのアルバイトと並行しながら続けている店。名前には「本は光となりうる。読むひとにとって。書くひとにとって。その間をつなぐ存在としての灯台でありたい」という思いが込められています。
lighthouse(千葉) 元サッカー少年が詰め込んだ「楽しい人生を送るための何か」1000冊(好書好日)
大船「ポルベニールブックストア」
JR大船駅近くで、ペンギンが出迎えてくれる店。店主の金野典彦さんは広告代理店や出版社勤務を経て「東京ではなく、自分の気に入った地方の街で暮らしながら仕事をしたいという思いが募っていきました。これまでの経験が活かせて、本が好きで、独立して本屋をやることに決めたんです」
沢木耕太郎『深夜特急』に魅せられ、ユーラシア大陸やアメリカ大陸を陸路で旅した経験の持ち主。その旅の途中で出会った地名が、店名の由来だと言います。スペイン語で「未来」を意味するこの単語に「本棚を介して本と対話し、本を介してこれまで知らなかった未来と出会って欲しい」という願いを込めています。
ポルベニールブックストア(神奈川) 深夜特急の旅で出会った、本から始まる「未来」探し(好書好日)
高崎「REBEL BOOKS」
JR高崎駅の徒歩圏で、店主の荻原貴男さんがデザインの仕事の傍ら開いている店。店名の由来は「基本的に世の中の『ふつう』とされていることに合わせる必要はないと思っているのと、『退屈に反抗する』という意味も込めて」。
中でも目を引くのは、地元のカルチャーやビジネスの歴史や由来を紹介したZineの品揃えが充実していること。群馬県外からも訪れて買っていく人がいるとか。群馬では珍しい個人経営の店ですが、県外からも注目され、しっかりと輝きを放っています。