言語聴覚士・石上志保さんの「ことばを育てるえほん あいうえオノマトペ」 オノマトペで楽しくことばを覚える
——「あっ!と びっくり/おどろいた」。「あ」から「ん」まで、五十音のオノマトペが楽しいイラストとともに並ぶ『ことばを育てるえほん あいうえオノマトペ』(絵・赤池佳江子/河出書房新社)。言語聴覚士の石上志保さんが考案した「ことばを育てる オノマトペカード 『あいうえお編』」(合同会社まちとこ)から生まれた絵本だ。
注射は「ちっくん」、車は「ブーブー」など、まだおしゃべりができない子どもにも、意味が伝わるオノマトペ。ご家庭はもちろん、保育園・幼稚園の先生や小児の療育に携わる言語聴覚士も使う機会が多いと思います。
例えば、ボール遊びをするときは「ぽーん」と言いながら投げたり、ボールを転がすときは「コロコロするよ」と言ったり。子どもとのコミュニケーションの際に、皆さんも自然と使われているのではないでしょうか。私も、一つひとつの動作にできるだけオノマトペを使いながら、子どもたちと接するように心がけています。
さまざまなお子さんと接するうちに「おうちでも手軽にオノマトペを使った言葉がけができないか」と考えてつくったのが、五十音のオノマトペカードです。当初は、私が手づくりしたものをPDFで無償配布していたのですが、以前療育指導を担当していたお子さんの親御さんが編集プロダクションに勤めていて、「クラウドファンディングでカードをつくってみませんか?」と提案してくださったんです。
ことばを育てる オノマトペカード『あいうえお編』と『ぱぴぷぺぽ編』の両方で、約1000名と、自分が想像していた以上の多くの方々にご支援いただき、赤池佳江子さんのすてきなイラストが付いた五十音のカードになりました。カードを見た河出書房新社の編集者さんからお声がけいただいて、いつでも携帯できる絵本として出版したのが『ことばを育てるえほん あいうえオノマトペ』です。
——4500語以上もあるといわれる、多種多様な日本語のオノマトペ。言語の発達段階では、音と意味を結び付けてことばを覚える「最初の架け橋」になるという。
これまでの「あいうえお」の絵本やカードには、楽しく五十音に親しめる素敵なものがたくさんあります。私も子どもたちと一緒にいろいろ使わせてもらってきました。ただ、おしゃべりを始める前のお子さんにとっては、ものの名前を聞いて覚えたり、そこから実際のものをイメージしたりするのはちょっと難しいかなと思うこともあったんです。
でも、例えば咳が出たときの「こんこん」であれば、ことばの響きと実際の音や様子が結びついているので、イメージしやすいですよね。音の繰り返しが多いので、真似しやすく覚えやすいのもオノマトペのいいところです。おうちでも咳が出たとき「こんこん、出ちゃったね〜」と小さなお子さんに話しかけている親御さんは多いのではないでしょうか。
五十音のオノマトペは、子どもたちが日常生活でよく聞くもの、自然に真似しやすいものという視点で選びました。「みーんみーん」「わんわん」など虫や動物の鳴き声のほか、魚が泳ぐときの「すいすい」、指でつつくときの「つんつん」など、動きに関連したオノマトペが特に多いですね。
赤池佳江子さんが、それぞれのオノマトペにぴったり合った表情や動作の絵を描いてくださって、より直感的に分かりやすくなっていると思います。絵本やオノマトペカードの絵を見て、真似をしてくれる子も多いんですよ。
——シリーズ2作目の『ことばを育てるえほん あいうえオノマトペ ぱぴぷぺぽいっと!』では、濁音、半濁音、拗音のオノマトペがテーマに。3作目の『ゆびでなぞって! ひらがなあいうえオノマトペ』では、五十音のひらがな部分がへこんでおり、指でなぞって楽しめる仕掛けとなっている。
濁音、半濁音、拗音は、ひらがな学習でつまずきがちなポイントの一つ。どの文字に“テンテン”や“小さいマル”を付けていいのか、分からなくなるようです。「ちゃ、ちゅ、ちょ」などの拗音は、発音するのも難しい。文字を見たらすぐにそれに対応する音が浮かぶよう、取り上げるオノマトペにも試行錯誤しました。
苦心したのは「みゅ」や「みょ」のオノマトペ。「みょ」は「みょんみょんみょん」とUFOにさらわれてしまう男の子となりましたが、このページは読み聞かせをする親御さんからも愛されていますね(笑)。赤池さんの絵もユーモラスでかわいくて、私も大好きなページになりました。
『ゆびでなぞって! ひらがなあいうえオノマトペ』は、ひらがなに興味を持ち始めたお子さんに向けた絵本です。指で凹部分をなぞることで、自然とひらがなに親しめるようなつくり。北原白秋の詩「あめんぼ あかいな あいうえお」のように、「すいすい そーっと さしすせそ」といった、リズムよく五十音が覚えられるオノマトペ版のテキストも付けています。
また、読者からご要望が多かったのがカタカナ編。シリーズ第4作となる『あいうえオノマトペ カンカンカタカナ!』を、ただいま鋭意制作中(11月刊行予定)です。小学校の国語の授業では、わずかな期間しか扱われないカタカナを、遊びながら楽しく学べる一冊となりました。
子どもの耳でも覚えやすく、真似しやすいというのがオノマトペのいいところ。作者としては、絵本で読んだオノマトペを、日常生活やちょっとした親子のコミュニケーションの時間で使ってもらえるとうれしいですね。最初から順に読まなくてもいいし、お気に入りのオノマトペのページだけ繰り返し読んでもいい。日本語のオノマトペの豊かさ、面白さを自由に楽しんでいただければと思います。