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昆虫好きも驚愕する「BRUTUS特別編集 合本 珍奇昆虫 Bizarre Insects Handbook」

ブラジルに分布する「エンシフェルオオニジダイコク」(標本体長51.8ミリ、標本制作・福井敬貴氏、撮影・伊藤徹也氏)。図版は本書から

 自分の場合、余暇で行く海外旅行なら、都市や人が溢(あふ)れる文化圏ではなく、自然豊かな場所――それも多様な生き物がいる場所を選びたい。

 デザインという仕事柄、日々“文化”にまみれて格闘しているからこそ、その磁場から逃れたいという思いがあるからだが、生き物が織りなす色や形――そのデザイン性に惹(ひ)かれて、直(じか)に見てみたいという欲求もある。結局は仕事に帰着してしまう。マダガスカルやタスマニアで見た鳥や蝶(ちょう)の絶妙な配色を自分のデザインに拝借したこともある(自然界に©はない、たぶん)。

 そんなそこそこ生き物好きを自認してきた自分であっても、この本に収められた昆虫たちに驚愕(きょうがく)した。知らない昆虫である以前に、未知の色や形に初めて出会うような、根源的な驚きがある。まるで別の惑星の生命を見ているような、この異質さはどこから生まれるのだろう。

 もちろん、容易に行けない地理的な隔たりもあるだろう。しかしそれ以上に、昆虫の“小ささ”も大きな要因ではないだろうか。こうした昆虫たちは奇抜であればあるほど総じて小さい。小さいが故に我々人間の生活圏とは別の位相にある。

 この本は、そうした小さな存在を拡大し、一冊の中で並列に提示することで、我々が認知できるスケールへと引き上げる。そのことによって、我々はその存在を新たな視点で再発見する。=朝日新聞2026年81日掲載